2012 Fiscal Year Research-status Report
処分性拡大論の理論的インパクト:紛争の成熟性・行為形式論・違法性の承継
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23730021
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
興津 征雄 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10403213)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / アメリカ |
Research Abstract |
今年度の研究は,大きく分けると,(1)行政訴訟(とりわけ取消訴訟)の判決の効力の主観的範囲に関する研究と,(2)行政訴訟の制度的基盤に関する研究を中心に遂行された。 すなわち,(1)は,判決効研究のうちこれまで手つかずでいた主観的範囲の研究に初めて取り組み,民事訴訟における形成判決の効力論を参考にしつつ,行政処分の実体法的効果との関連で,行政事件訴訟法32条に規定するいわゆる第三者効の存在意義を解明することができた。特に,行政法学の通説は行訴法32条の第三者効を形成力の拡張と解しているのに対し,本研究ではこれを既判力の拡張と理解する新たな(といっても学説史的には古くから根強い支持のある)見解を提唱した。なお,このテーマについては,ある集合著作に寄稿するために論文を脱稿し,すでに校正まで進んでいるが,他の執筆者の都合により,公刊には至っていない。 また,(2)は,フランスにおける論告担当官という特異な制度の成り立ちや存在意義を,他の類似の制度との比較により明らかにし,さらにヨーロッパ人権裁判所の判例の展開を追跡して,“公正な裁判を受ける権利”が超国家的法秩序において保障されることの意味を追究した。行政活動の国際化がますます進展する中で,人権保障や法の支配などの普遍的価値が超国家的法秩序においてどのような役割を果たしうるかという,新たな研究課題を展望することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題について,従来手つかずであった観点から研究を遂行し,現時点での課題を明確に認識するとともに,今後採るべきアプローチを確認することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究実績を踏まえ,研究を新たな方向に進めることを企図している。 具体的には,行政と司法の役割分担という従来から持っていた分析視覚を活かしつつ,一つには,民事法による公益実現のあり方と比較することにより,行政に固有の存在意義についての考察を深める。もう一つには,超国家的法秩序における行政・司法概念の再定位とそれぞれの役割を探究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き,研究課題に関する文献資料の収集を進めるとともに,国内外における調査を予定している。
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Research Products
(6 results)