2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村西 良太 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (10452806)
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Keywords | 議会留保 / グローバル化 / 欧州連合(EU) / 議会の自律的組織権 / 本会議 / 委員会 |
Research Abstract |
最終年度にあたって、3年間の研究成果を公表することに主眼を置いた。 第一の主題は、いわゆる「議会留保」の範囲と強度である。基本権の実現と直截的には関わらない政策決定であっても、国政上のその重要性に鑑みて、議会による事前の承認が義務づけられ得る。そうした議会の承認権について、憲法上の論拠を明らかにしつつ、その範囲を画することが一次的な課題となった。 本研究の比較対象国であるドイツにおいては、EUをはじめとする多国間の政策決定と関わって、この問題が近時注目を浴びている。なかでもユーロ圏の債務危機を克服するために設立された多国間融資の枠組をめぐって、たとえば融資対象国の選定や融資条件の策定に際して、ドイツ国内の議会をどの時点でいかに参画させるべきか、公法学の議論は活況を呈した。かような「財政的な議会留保」と並んで、同様の問題構造が従来指摘されてきた軍事の領域(なかんずく多国間安全保障をめぐる議会留保)にも視野を広げ、両者の比較を通じて上述の問題を明らかにしようと努めた。 第二の主題は、「議会留保」の担い手である。すなわち、上述の意味での「議会留保」が認められるとして、そこでの承認権は常に本会議によって行使されなければならないか、それとも委員会による行使も容認されるべきか、という問いが本研究の新たな課題として浮上した。いわゆる「グローバル化」に伴って、政策決定のいっそうの迅速性や秘匿性が求められるとすれば、委員会の活用は一考に値するだろう。その一方で、国民代表たる議員の対等な審議参画権を保障する必要も無視することはできず、両者の調和を図る方策が検討の俎上に載せられることとなった。
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