2013 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ連邦最高裁判例に見られる公教育に関する憲法法理の歴史研究
Project/Area Number |
23730027
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中川 律 宮崎大学, 教育文化学部, 講師 (60536928)
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Keywords | 公法学 / 憲法学 / 教育法学 / 公教育 / アメリカ合衆国憲法 / 比較憲法 |
Research Abstract |
最終2013(平成25)年度には、本研究課題の第2の柱である1920年代以降の公教育に関する憲法法理の憲法史上の位置づけに関する資料の収集・分析を中心に研究を行った。また、関連する各種の学会・研究会に参加し、他の研究者との意見交換を通じて、有益な情報等を入手することができた。 この結果の最終年度の研究成果は次のとおりである。対象とした1920年代から1940年代にかけては、いわゆるロックナー判決期からニューディール憲法革命を経て、アメリカ連邦最高裁判例の憲法法理が大きく変化した時期である。その具体的な中身に関する近年のアメリカ憲法史研究を分析すると、①それは違憲審査の手法の変化という点では、政府権限の内在的な限界論から比較衡量論への変化として描写しうるものであること、②この時期がいわゆる優越的地位を有する権利論の萌芽期であるところ、これには、この違憲審査の手法の変化を前提にしながらも、政府権限の内在的な限界論の発想を引き継ぐという面を有するものであることが概ね明らかになった。また、③1940年代における公教育に関する政府権限を従来よりもさらに限定する憲法法理の発展を促した大きな要素のひとつが、こうした連邦最高裁判例の憲法法理全体の展開であることが明らかになった。 こうした成果と本研究課題の第1の柱である連邦最高裁の憲法法理に対する公教育制度の歴史的影響の分析と合わせて、これらは、この分野でのアメリカ合衆国の憲法法理の内実のより詳細かつ正確な理解に資するものである。それゆえ、本研究課題の実施により、当該分野でアメリカの憲法法理を比較対象にして日本でのあり方を検討する際に、日本の文脈でも参考すべき面と批判的に見るべき面とをより適切に腑分けするための前提を整える作業を一歩進めることができたと思われる。そして、実際に、この成果を踏まえて、日本でのあり方の検討も進めることができた。
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