2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730033
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 講師 (40551495)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 立法手続 / 法律案修正権 / 議会制度 |
Research Abstract |
平成23年度は、日本における「立法手続法」、特に「法律案提出手続法」の体系化を行うために、その比較対象となるフランスにおける「法律案提出手続法」に関する議論を調査・検討した。「法律案提出手続」は、「原案提出手続」と「修正案提出手続」、さらに「原案・修正案の議院による受理手続」とに分けられるが、本年度は、とりわけ「修正案提出手続法」に関するフランス法の議論を検討した。その成果として執筆したのが次の論文である。奥村公輔「法律案提出権の行使とその限界」曽我部真裕=赤坂幸一編『大石眞先生還暦記念 憲法改革の理念と展開 上巻』(信山社、2012年3月)761-796頁。 この論文は、修正案提出手続が法令・判例によってどのように規律されているのかを体系的に分析したものであるが、我が国の憲法学においてこれを分析した文献は見当たらない。本論文は、その意味で非常に意義のあるものである。のみならず、本論文は、フランス法の分析から得た知見を活かして、日本における修正案提出手続を規律している法をいかに解釈すべきかについても検討した。我が国において修正案提出手続を規律している法をいかに解釈すべきかについては、研究者のレベルにおいても議会の実務家レベルにおいても全く検討がなされておらず、その意味でも本論文は我が国の憲法学に大きな寄与をもたらすものである。したがって、この論文は、我が国において「立法手続法」を体系化するための一助となりうるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「立法手続法」のうち特に「法律案提出手続法」を体系化することを目的としている。本年度は、フランスにおける修正案提出手続に関する議論を検討した「法律案修正権の行使とその限界」と題する論文を執筆し、フランスにおける法律案提出手続のうちの修正提出手続に関する法、すなわち、「修正案提出手続法」を体系的に分析した。さらに、そこから我が国における「修正案提出手続法」に関する解釈の示唆を与えた。その意味でこの論文は本研究の目的である「立法手続法」の体系化の一助となる。 当初は、自ら研究会を主催して、中間報告を行い、専門家から意見を聞く予定であったが、これを行うことはできなかった。しかし、上記の論文の執筆中に、本研究分野との近接した採択課題「衆議院事務局の未公開資料群に基づく議会法制・議会先例と議院事務局機能の研究」(基盤研究(A)、平成21~23年度、研究代表者:大石眞)の第5回研究会(平成23年7月23日実施)において、「法律案修正権の行使とその限界」と題する研究報告を行った。この研究会には、議会研究を行っている研究者と議院の法制局や事務局の職員などの実務家が多数参加しており、本報告においてこれら各分野の専門家から貴重なアドバイスを受け、それを論文執筆に活かすことができた。したがって、当初の目的を果たすことはできたと言えよう。 また、この作業と連携しながら、共著の教科書〔松浦一夫編著=稲葉実香=奥村公輔=片桐直人=山中倫太郎共著『憲法入門』(三和書籍、2012年3月)197-267頁〕を公刊した。立法手続は統治機構論と深く関わっており、「国会」、「内閣」、「裁判所」を担当・執筆することによって、立法手続に関する日本法の知見を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「法律案提出手続」は、「原案提出手続」と「修正案提出手続」、さらに「原案・修正案の議院による受理手続」とに分けられるが、フランスにおける「原案提出手続」を検討した論文はこの研究課題が採択される前にすでに公表しており、また、本年度は、「修正案提出手続」に関するフランス法の議論を検討し、論文を執筆した。したがって、次年度は、「原案・修正案の議院による受理手続」に関するフランス法の議論を検討する論文を執筆していく。 また、次年度以降に、フランスにおける「立法手続法」のうち特に「法律案提出手続法」を体系的な分析を行った専門書を公刊したいと考えている。この専門書の構成として、上記のすでに公表・執筆済みの論文に、次年度に執筆予定の論文を加えたものとなることを予定している。したがって、次年度においては、フランスにおける「原案・修正案の議院による受理手続」に関する論文を執筆する作業と並行して、すでに公表・執筆した「原案提出手続」及び「修正案提出手続」に関する論文への加筆・修正をも行い、専門書公刊の準備作業を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も本年度に引き続き、フランス及び日本の憲法学、特に、立法手続や議会制度に関する文献を購入していく。日本では入手困難なフランスの文献に関しては、本年度にフランスに行って現地で資料収集する予定であったが、本年度はこれを行うことができなかったので、次年度にこれを行いたい。したがって、渡仏するための旅費を次年度のために残してある。 また、次年度末には、研究成果を発表する研究会を開催する予定である。その際、憲法学、特に議会制度を専門的に研究している研究者、及び、国会職員などの実務家からアドバイスをいただきたいと思っているが、遠方から来る者に対しては、旅費を支給したいと考えている。
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Research Products
(2 results)