2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730036
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
伊川 正樹 名城大学, 法学部, 准教授 (60340288)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ / カナダ / オーストラリア / マレーシア |
Research Abstract |
わが国における譲渡所得に関する問題について検討し、いくつかの論稿を公表した。 まず、譲渡所得課税における課税繰延べおよび特別控除という特例措置の意義と理論上の根拠について検討した論稿(「譲渡所得課税の特例制度の理論的根拠」税法学565号(2011年5月)で明らかにした内容を前提として、そうした特例が適用される"非自発的譲渡"の場合になぜ全額課税免除とならないのか、財産権保障との関係で問題とならないのか、という点について検討した「譲渡所得課税の特例措置と財産権保障」(税法学566号・2011年11月)では、譲渡特例は単なる政策的ないし優遇的な措置ではなく、憲法29条に基づく財産権保障の要請を具体化するものであるとの帰結を導いた。 また、所得の実現という概念をカギとして、譲渡所得の性質および課税の趣旨の検討を行った「譲渡所得税とその課税および実現主義」(『行政と国民の権利(水野武夫先生古稀記念論文集)』(2011年・法律文化社))において、従来から対立している2つの学説(増加益清算説と譲渡益課税説)の対立点を明らかにするとともに、譲渡所得に対する課税は、所得の発生、実現、認識という三層構造で理解することの必要性を説いた。 これらの検討は、いずれも日本税法に関するものであり、また所得税法上の問題にとどまるものである。したがって、研究テーマの一側面について検討を行ったのが今年度の研究実績ということになる。 外国法の検討については、今年度はアメリカにて聞き取り調査等を行ったものの、その内容を公表するまでには至らず、次年度以降に論稿等を著す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、今年度は主に所得税の側面から研究を行ったが、相続税について十分に研究を進めることができなかった。その理由としては、まず、外部からの依頼に応じて、税法における他の論点(損失の取扱いや控除制度、法人税法上の問題、租税法律主義に関する問題など)に関する研究を先行して行ったことが挙げられる。また、講義や学内業務に予想以上に時間を割いてしまったという点も理由の一つとして挙げられる。 もっとも、相続税に関する検討は以前にも行ったことがあるため、この程度の遅れは次年度に取り返せる程度のものであると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画として記載したように、次年度は、国内の文献研究を継続するとともに、外国法の検討を実施する。当初は、カナダ法の検討を予定していたが、オーストラリア税法からも本研究との関係で有益な示唆が得られると考えており、また知人を通じてオーストラリアの大学における研究者を紹介してもらう機会を得たため、次年度はオーストラリア税法を研究する予定である。すでに今年度、一定の文献を購入したので、文献研究を行った上で現地において聞き取り調査等を行うことを考えている。 また、その後、カナダ税法やマレーシア税法についても研究を行い、適宜、その成果を公表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オーストラリア税法に関する文献で不足しているものを追加購入し、現地での聞き取り調査のために旅費を使用する。訪問時期は夏季休暇中もしくは春期休暇中のいずれかを予定している。 また、カナダ税法に関する文献が不足しているため、購入する予定である。さらに、国内の関連文献についても、必要に応じて購入する。
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