2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730042
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
前田 直子 京都女子大学, 法学部, 講師 (80353514)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際人権条約 / 国連 / 欧州 |
Research Abstract |
平成23年度においては、まず欧州人権条約上の実行を素材として、欧州人権裁判所(以下、「人権裁判所」)の判決履行に関する欧州評議会閣僚委員会における対応について、その報告書や会議録などから調査を行った。また国際法及び憲法の研究者によって構成されている欧州人権裁判所判例研究会において、複数回の報告を自ら行うとともに、他の報告者の報告を聴取することにより、欧州人権条約締約国が、人権裁判所判決により指示された一般的救済を、国内的に実施しようと極力試みていることが明らかになった。しかしそのことは、現状においては、締約国が具体的な条約規定に基づく国家の義務として認識していると結論づけるまでには至らず、締約国と人権裁判所や欧州評議会閣僚委員会との間の協力・信頼関係に基づくものであると推測される。 現地調査として、ヘルシンキ大学法学部ERIC CASTREN 国際法・人権研究所及び欧州人権裁判所を訪問した。ヘルシンキ大学では、「第24回国際法夏季セミナー」に出席する機会をとらえ、フィンランドの人権裁判所判決への対応状況について、学識者からの聞き取りを行った。人権裁判所では、条約締約国における判決履行状況について、関係者への聞き取りと、同裁判所図書館における関係資料の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
条約実施機関による一般的救済措置の指示(判決や勧告)の状況については、日本において予定していた予備調査を遂行している。とりわけ欧州人権裁判所におけるパイロット手続の状況、人権裁判所の判決による一般的救済措置の要請状況及び締約国による履行状況については、各種統計や資料が豊富に作成されており、またそれらの資料は比較的容易に入手できる環境にあったため、資料を基にした検討・分析作業は進展があった。 現地調査については、欧州人権裁判所や一部条約締約国への聞き取りは行うことができたが、国連人権条約機関については、先方関係者の都合により、平成23年度に予定・実施した先述の1回の現地調査においては予定を組み込むことができず、平成24年度に行うこととなった。 研究の中間状況については、欧州人権裁判所判例研究会などでの複数の研究会報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究をもとに、条約実施期間から人権侵害に対する救済手段として一般的救済を多く命じられている締約国を見つけ、その中から特に一般的救済の履行率が低い国を抽出する。当該締約国(現時点ではイギリスを候補として検討)の政府関係者へのインタヴューを試み、何を一般的救済義務の根拠と考えるか、また何が実際の当該義務の履行に対する障害となっているかなどの聞き取り調査を行う予定である。 また調査対象とする締約国(イギリスなど)における専門家(大学研究者)からも、その知見の提供や助言を得る機会を獲得したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の今後の研究の推進方策を実行するために、1回の調査・資料収集のための外国旅費と、1回の成果発表のための外国旅費としての使用を予定している。あわせて、日本国内における人権法あるいは国際法関係の研究会において、積極的に研究状況の報告を行うための国内旅費を計上する。 また研究関連の図書・資料(国連人権諸条約や欧州人権条約の実施状況に関するもの)などの購入に充てるとともに、研究成果の発表のために、英文校閲費用や論文別刷印刷費用なども予定している。
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