2011 Fiscal Year Research-status Report
WTO紛争処理における履行確保に向けた課題-利害関係者の視点から-
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23730045
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
飯野 文 日本大学, 商学部, 講師 (00521288)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | WTO紛争処理 |
Research Abstract |
平成23年度は、非貿易的関心事項(食品安全や環境保護)分野において、どのような状況下で貿易紛争が生じているのか、また紛争が生じた場合にWTO協定上どのような規律上の限界があるのか等について主に検討を行った。 この結果、食品安全分野については、輸入国が発動する緊急措置、輸入国の食品安全基準への適合、科学的不確実性(GMO)、民間基準、輸入国の食品安全確保体制の導入、潜在的課題としてFTAの締結に伴う基準の厳格化といった問題が貿易紛争につながり得ることが得られている。 また、環境保護関連の過去の紛争を検討すると、WTO協定上の課題として、GATT第20条と物品貿易に関するその他の協定との関係、GATTとTBT協定との関係、TBT協定が規定する「正当な目的」のための措置とGATT20条との関係、GATT20条各号該当性が検討されるべき対象の射程及びGATT20条柱書が規定する、同様の条件の下にある諸国間の「恣意的な差別」、同諸国間の「正当と認められない差別」、「国際貿易の偽装された制限」という3つ基準の間の関係、それぞれにおいて明確化の必要性が確認された。 研究実施計画によれば、平成23年度にWTO紛争の類型化を行うこととしている。非貿易的関心事項の分野では、履行確保が遅れる紛争案件も過去に見られていることため、上記の分析結果は、貿易紛争上の特性を検討する上で貴重な示唆を得ることができたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」で示した通り、平成23年度において行った研究成果は、貿易紛争上の特性を検討する上で貴重な示唆を提供するものではあるものの、研究計画によれば、平成23年度は、WTO紛争の全般的な類型化を行うと同時に履行困難性の概念の整理を行うことを予定していたため、右計画に照らせば、やや遅れが見られる。遅れの理由としては、紛争事案を検討する際に潜在的な紛争事案や事案の細部にまで入り込んでしまったことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も研究計画に準じて、進めていくこととしたい。具体的には、平成23年度に予定していたWTO紛争の全般的な類型化と履行困難性の概念の整理を行うことを目指すこととしたい。他方で、平成23年度に行った分野別から検討していくという方法においても、研究上の貴重な示唆を得られるため当該方法も並行して行いながら進めていくこととしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していたインタビュー調査関連費用を平成24年度に繰り越している。平成24年度に当該調査を行うことを目指すが、場合によっては、平成25年度に集中してインタビュー調査を行うことも視野に入れていく。
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