2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730051
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 悠 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00456097)
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Keywords | 社会法学 / 労働 / 倒産 / 労使関係 / 再建 |
Research Abstract |
本研究は、再建型倒産手続において労働者の取扱いが極めて重要な位置づけを占めるにもかかわらず、これまで再建型倒産手続の特殊性に着目した労働法研究が十分になされていない現状に鑑み、比較法的考察の手法を用いながら、再建型倒産手続における労働者の取扱いを分析するものである。 そこで、研究初年度の成果を受けた研究二年目の今年度は、研究実施計画に沿って、以下の通り研究を実施した。まず、初年度から一部の研究を前倒しで開始したことによって、既に比較法的考察の前提条件が整えられつつあったアメリカ法について、今年度は、より掘り下げた包括的な研究・分析を試み、比較法的知見を獲得することに注力した。また、他方で、初年度に研究を行い、既に相当な成果を上げている日本法についても、会社更生法の適用下でなされた整理解雇の有効性を争う下級審裁判例が2件相次いで登場したことを受けて、本研究課題との関連性に社会的な関心が集まるとともに、新たな論点も提供されたため、更に研究を深める必要が生じた。そのため、今年度は、日本法に関しても、追加的な調査・研究を外国法研究に並行して行った。 また、今年度は、初年度以上に研究成果の公表にも積極的に取り組み、公表できる程度に取りまとめができた論点を中心に、日本法・アメリカ法を問わず、多数の論文を公表したほか、本研究課題に関して第123回日本労働法学会大会での個別報告も行った。これらは、日本法・アメリカ法を問わず、これまでに研究されたことのない領域を取り扱う研究であったため、予想通り、成果の公表あるいは報告によって、労働法・倒産法双方の領域から、学説・実務を問わず高い関心と多くの反響を呼ぶに至ったため、次年度に向けて研究のさらなる進展・取りまとめの促進が期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、比較法的見地を踏まえながら、わが国の再建型倒産手続における労働法の規範構造を分析し、解釈論・立法論両面から、課題の析出及び解決に向けた試論を提示することを目的としている。 研究二年目である今年度は、初年度に行われた日本法の現状分析及び比較法研究の準備的考察を前提に、本格的な比較法研究に取りかかることができた。もっとも、当初の研究計画にはなかったが、日本法において新たに出された裁判例に対応した論考を早急に公表する必要が生じた関係で、比較法研究に関する成果の公表までは必ずしも十分に行うことができなかった。しかしながら、研究最終年度である次年度の取りまとめに向けて、比較法研究を進展させ、日本法に関する研究も深めることができたため、研究実施計画に基づいて予定されていた今年度の研究目標はほぼ達成することができた。そのため、今年度の研究成果を受けて、次年度は、比較法研究の成果から比較法的見地を獲得しつつ、研究成果を取りまとめるという当初の計画を、予定通り実施することができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年である次年度には、今年度までに得られた、日本法に関する研究成果及び比較法的知見を活用して、本研究の取りまとめ作業を行う。 第一に、日本における再建型倒産手続の構造を、事業譲渡による再建手法も念頭に置きつつ分析し、解釈論・立法論両面から課題の析出を行う。その際には、解釈論としての課題なのか、立法論としての課題なのか、的確に峻別して検討する必要がある。続いて、諸外国との比較法的見地に立って、日本が抱える課題につき、解釈論・立法論両面から、解決に向けた試論の提示を試みる。以上の作業を通して、日本の再建型倒産手続における労働法規範を構造的に分析し、「倒産労働法」と呼ばれる法領域における「再建型」に対する特別な配慮の必要性を基礎づける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額となる研究費は、今年度末に本研究課題にかかる実地調査を行ったものの、所属研究機関における財務上の処理が次年度以降にずれ込んだため生じた残額に過ぎない。そのため、実質的には今年度の研究において使用した経費であり、会計処理上、たまたま次年度使用の扱いとなっているものである。したがって、次年度の研究に当たって利用される予定はない。
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