2014 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションが重要な市場における企業結合規制のあり方に関する総合的研究
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23730056
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
池田 千鶴 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40346276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | イノベーション / 企業結合 / 証拠・立証方法 / 問題解消措置 / 双方向市場 / プラットフォームビジネス / 間接のネットワーク効果 / シングルホーミング・マルチホーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成23年度~平成26年度の4年間で、イノベーションや研究開発が特に重要な市場における適切な競争政策・競争法の適用・執行のあり方を考えるため、企業結合規制に着目して研究するものである。具体的には、イノベーション競争や研究開発競争に対する考慮が競争法上の評価・分析の対象となる全ての段階(市場の画定、反競争効果の分析、競争促進効果の分析、競争回復措置(問題解消措置)の設計の各段階)について、米国、EU、および、我が国における企業結合規制における分析事例を素材として、行政機関における合併審査の諸問題のみならず、裁判所における司法審査に耐えうる証拠・立証のあり方も含めて、多角的、総合的に比較法研究する。これにより、4年間の研究期間内に、イノベーション競争や研究開発競争に対する考慮が競争法上の評価・分析の対象となる企業結合についての違法性判断基準、審査分析の手法、証拠・立証方法、問題解消措置の設計のあり方を明らかにする。 本年度は、近時、双方向市場(two-sided markets)として経済学・経営学における研究が進んでいる、異なる2つ以上の顧客群を媒介し、一方のサイドの顧客群の数が多ければ多いほど、他方サイドの顧客群にとっての効用が高まる間接のネットワーク効果が働く、インターネット上におけるプラットフォームビジネス(たとえば、検索サイトやオークションサイトなど)に関するM&Aにおいて、企業結合審査上で配慮すべき課題や慎重に審査すべき識別基準等を明らかにするため、米国やEUなどの海外競争当局の審査事例を中心に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外競争当局(米国司法省、連邦取引委員会、欧州委員会)のWebサイトには、当該企業結合案件の検討結果や報道発表資料が掲載されており、イノベーション競争の減少が反競争効果して問題となったケースの収集はウェブを通じて可能である。また、年次報告書や競争当局関係者によるスピーチ原稿もウェブを通じて収集可能である。近時、競争当局者のスピーチでイノベーション競争について言及することが頻繁にみられ、米国・EUにおける競争当局関係者がどのケースについてどのような問題関心を持って重点的に審査を行ったのかを把握することが可能となっている。 もっとも、イノベーション競争が重要な考慮要素となり、競争回復措置の設計が困難であったためにM&Aが断念された事例もあり得ると思われ、そのような事例の検証は研究上の価値が極めて高いにもかかわらず、このような事例の情報収集に困難が伴うのは残念なことである。
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Strategy for Future Research Activity |
イノベーションが重要な市場において、合併や買収などのM&Aが将来のイノベーション競争、研究開発競争に与える影響をどのように評価すべきか(市場の画定、反競争効果の分析、競争促進効果の分析)、将来のイノベーション競争や研究開発競争に及ぼす影響を取り除くための競争回復措置(問題解消措置)の設計はどのようにあるべきか、それは可能なのかも含めて、世界の競争当局が日々直面する重要な課題となっている。 平成27年度は本研究の最終年度にあたるため、これまでの研究で明らかになったことを整理して研究成果をまとめて公表するとともに、引き続き研究すべき残された課題を浮彫りにできるように努めたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、ある程度まとまった期間を海外で滞在して、追加的な現地調査と最終的な成果発表を行う予定であったところ、平成27年1月より、情報通信審議会の専門委員として、接続政策委員会において、接続料の算定方式を含む加入光ファイバにかかる接続制度の在り方をより専門的な知見に基づき検討することとなったため、ある程度まとまった期間をとって海外出張することができなくなり、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度は最終年度であったが、公務の都合のため海外での追加調査・成果発表が実施できなかったため、平成27年度まで補助事業の期間延長を申請し、承認を得たところである。 平成26年12月18日付け情報通信審議会答申「2020年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて-」等を受けて、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」が平成27年4月3日に閣議決定されたところである。合併・株式取得等による経営形態の大きな変更が生じる際の電気通信事業の登録の更新制の導入等が改正法案に含められている。本研究をさらに1年間継続することは、本研究の社会的意義をより高めることにつながる。継続的な調査・研究とこれに基づく追加的な研究成果の国内・国外での発表は次年度に行うこととし、未使用額はそのための経費に充てる計画である。
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Research Products
(10 results)