2012 Fiscal Year Research-status Report
競争法、公的執行機関、及び民間当事者ーより実効的な相互関係を目指してー
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23730058
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
VAN・UYTSEL S 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30432842)
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Keywords | リニエンシー / 公的執行機関 / 競争法 / コレクティブ・アクション |
Research Abstract |
本研究は、以下の二つの作業を軸として進めた。 第一に、 研究の主たる部分としては、日本におけるリニエンシー・プログラム(課徴金減免制度)に焦点をあてた。研究方法としてカルテル参加者と法律家にアンケートを送付し、それに基づき予見的な結論を導き出した。結論として、一見したところ減免制度は日本においてきわめて実効的であると言い得る。ただし、施行前のデータと比較することにより、異なった理解を導くことも可能である。日本では、公取委の決定数が減免制度の施行後に減少した。この事態は、米国やEUで生じた事態とは逆である。しかし、決定数の少なさが問題であるとは必ずしも考えるべきではなく、事業者による多数の減免申請の中から、決定を実施する件を公取委が職権により選定する限り、また、価格協定に対する審査の増加、外国の審査からのフォロー・アップケースの減少、公取委による詳細なカルテル情報の入手と同時に、公取委決定数の減少が進行する限り、公取委が多数の決定をしなくとも減免制度は実効的であるといえるだろう。これを通して、国内外における様々な報告により、リニエンシー・プログラムの実効性に関して論じることができた。 第二に、より一般的に、競争法の執行における私的当事者の地位を分析するために研究計画を拡大した。結論として、コレクティブ・アクションの制度によって、個別的利益を調整され、それらが集団的利益へと集約される場合は、あまりないと言える。したがって、司法へのアクセスが強化されるのも、限定的な場合のみである。しかし、そのような調整が可能である場合が少ないとしても、司法の実効性は高まるであろう。効果的なコレクティブ・アクションは、企業家による競争法違反行為を抑制し得るからである。このように、コレクティブ・アクションは、間接的に、個別的利益と公共利益とを調整しているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画は当初の計画通りに進行している。国内外における様々な報告からは、フィードバックとしてリニエンシー・プログラムにかかわる利害関係者の行為についてのより深い見解を得ることができた。これらの情報は、すべて研究計画の二年目に行う質問票のより適切な作成を可能にするものであった。さらに、私的当事者一般に対して研究が拡大された。いかなる私的当事者であれ、競争法違反に対する賠償を得ることができるのはどの範囲かという事が検討された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下の二つのラインに沿って行われる。第一に、カルテル参加者と法律家達に送付した質問票を分析する予定です。第二に、日本のリニエンシー制度は、米国やEUのように他の管轄権を見出すことがでいるのかどうかについても研究していく。もし可能であれば日本での発展が他のアジア諸国にも教訓とできるよう論じていきたい。 以上の様に、この研究は経験的な手法による研究に焦点をあてるものである。この研究の結果は様々なカンファレンスにおいて報告される予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究費の使用は以下の様に予定されている。第一に、関係分野に関する最新の知見を獲得するために書籍の購入にあてられる。特に、競争法における利害関係者の行動を描こうと努めるものでもある、法の行動経済学的分析と競争法にかかわる研究書籍に注目している。第二に、日本国内外のカンファレンスやワークショップにおいて研究結果を報告する。また、質問票を用いた調査に対する反応を調べるためのインタビューも行う。よって、研究費はこれらのための旅費としても使用される
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Research Products
(9 results)