2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成瀬 剛 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90466730)
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Keywords | 科学的証拠 / 証拠の許容性 / 裁判員制度 / 証拠の関連性 / DNA型鑑定 / 刑事証拠法 |
Research Abstract |
最終年度の前半は,科学的証拠に関する議論の相互参照が著しい英米法諸国(4カ国)の影響関係をまとめ,その成果を日本における議論状況に接合させて,さらに考察を深めた。そして,最終年度の後半は,これまでの全ての考察を踏まえて,本研究の検討課題に対する結論をまとめた。その内容は,研究期間全体を通じて実施した研究の成果でもあるので,以下,詳述する。 まず,日本における関連性概念は,①要証事実の当該事案における適切性の問題,②間接事実から要証事実を推認する過程の問題,③証拠から間接事実を認定する過程の問題という3つの問題を検討することにより,「当該証拠から,その事案の審判対象にとって適切な要証事実を推論していくことができるか」を問うものであると再定位した。次に,上記の関連性概念の下で,科学的証拠の問題がどのような位置づけを与えられるかについて明らかにした。その上で,科学的証拠に対して特別な規律を要求する規範的根拠及び解釈論的根拠を解明し,それらの根拠は科学的証拠に限らず,専門的な知識・経験を用いた証拠(以下,「専門証拠」という)全てに妥当すること,つまり特別な規律の射程は専門証拠全体に及ぶことを示した。最後に,専門証拠一般に妥当する許容性基準として,①基礎にある原理・方法の信頼性及び②当該事案における検査過程の適切性という2要件を定立し,①の信頼性要件の判断にあたっては,科学理論に基づく専門証拠と経験則に基づく専門証拠という二分類を設け,それぞれに異なる信頼性判断要素を提示した。 この研究の意義は,①科学的証拠をはじめとする専門証拠全般の許容性について理論的正当性を持つ包括的基準を導出し,裁判員制度の下で安定した許容性判断がなされるようにしたこと,②関連性概念の再定位によって,従来,同概念の下で議論されてきた他の証拠群の許容性研究に対しても共通の基盤を提供したこと,にある。
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Research Products
(6 results)