2011 Fiscal Year Research-status Report
裁判員裁判における量刑‐多変量解析を用いた数量化研究‐
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23730062
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡邊 一弘 富山大学, 経済学部, 准教授 (90449108)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 裁判員制度 / 量刑 |
Research Abstract |
本研究の主たる分析課題は、裁判員制度施行前の第1審裁判所における殺人罪についての判決とLEX-DB 等から入手した裁判員裁判が適用された殺人罪判決を分析対象し、裁判員裁判における量刑傾向の客観化と量刑判断の構造についての制度施行前後の比較を行い、量刑判断における傾向の変化の有無および量刑判断の変化の内容を客観的に分析することであるが、平成23年度は、まず、申請者がこれまでに取り組んできた量刑判断構造の客観化を目的として実証的研究(「死刑の適用基準」、「女性による殺人罪の量刑」など)においても作成した量刑構造分析のための調査票や学界および実務におけるこれまでの「量刑法」研究の学問的成果、また裁判員裁判における量刑の特徴についての指摘を参考にし、本研究の調査目的についての分析を可能にすることが期待できる量刑因子等を選出し、調査項目を選別し、調査票の作成に取り組んだ。 調査対象判決例の収集にも取り組んだ。平成23年度には、女性犯罪研究会(研究代表:岩井宜子専修大学法科大学院教授)が殺人罪事件についての総合的分析を行うために最高裁の協力を得て収集した、平成元年から平成10 年までの全国の地方裁判所の殺人罪判決(専修大学法科大学院岩井宜子研究室にて保管)のなかから、分析に必要な因子を抽出しうるだけの情報が記載されている判決例を選別作業および複写作業に取り組んだ。これに合わせ、裁判員裁判における裁判例の収集作業も進め、23年度には判例データベース「LEX-DB」を用い、裁判員制度施行後、裁判員裁判が採用された殺人罪事件についての死刑と無期懲役の第1審判決の収集を先行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、平成23年度は調査票の作成と「LEX-DB」などの判例データベースを用い、裁判員制度施行後、裁判員裁判が採用された殺人罪事件の判決例を収集に取り組むことを主たる研究実施内容と想定していたが、平成24年度に取り組む予定であった専修大学岩井宜子教授研究室保管の判決例について、管理上の理由から23年度に先行して調査・複写の作業を行う必要が生じたため、予定を変更し、こちらの作業を先行して行った。 また、有効に調査目的を達成しうる調査票を作成するため、近年の量刑法研究の展開や裁判員裁判の運用についての分析研究に力を注いだため、調査票の完成にはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、まず調査票の完成を目指すが、これについては、現在のやや広く調査項目を設定し、また記述的回答項目もや多く設けている暫定版調査票を用いながら、分析段階で調査項目の最終確定を行っても対応できると考えている。また、24年度も報告書作成に間に合う限りで、可能な限りデータベース「LEX-DB」 等から裁判員裁判が適用された殺人罪判決の収集に取り組むこととする。 平成24年度には、報告書作成のため、すべての分析対象判決例について、調査票への記入が終了した後、エクセルに調査票の内容を入力し、「エクセル統計」を用いて刑期の長短に影響を及ぼす要因の抽出および重みづけについて、数量化理論第I類の手法を用いて客観的に分析を行う予定である。また、実刑と執行猶予との判断基準を判別するため、統計ソフト「SPSS」を用いてロジスティック回帰分析による解析を行い、判断に影響力を及ぼす要因を客観的に抽出することを試みる予定である。さらに、統計ソフト「エクセル統計」を用いて数量化理論第II類による解析を行い、実刑判決と執行猶予判決とを識別する要因の重みづけをふまえた識別表を作成を試みる。 これらの統計分析をふまえ、裁判員裁判の下での量刑判断の客観化、および裁判員制度施行前後の量刑判断の構造の相違の客観化を行い、今後、学界および実務において裁判員裁判での量刑のあり方、特に刑量の数量化についての検討を進めていくにあたり、統計処理により基礎づけられた裁判員裁判における判決(量刑)の構造についての客観的資料を提供し、データの共有および影響力の大きい量刑因子等を示すことにより、量刑判断の構造について検討する際の「共通の議論のベース(議論の出発点)」となり得る科学的根拠の構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、調査票への記入、調査項目についての分析、報告の作成が主たる作業となるため、記録媒体や印刷用事務備品の購入が主たる研究費の使用用途となる予定である。 また、平成23年度に取り組んだ女性犯罪研究会が収集した判決例(専修大学にて保管)について、調査票記入段階において内容の再確認の必要が生じた判例もあるため、数回の専修大学への調査出張の必要が生じている。
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Research Products
(5 results)