2011 Fiscal Year Research-status Report
二重の危険の政策的基礎―二重の危険の再構成に向けて―(1)
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23730063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (80318716)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 二重の危険 |
Research Abstract |
本研究(平成23年度~25年度)においては、(1)米国における二重の危険の政策的基礎(underlying policy)の分析を完了し、(2)ドイツにおける重複処罰禁止の原則の政策的基礎を分析するという二つのことが目的となっていた。そして、平成23年度においては、具体的には、(1)米国における二重の危険の政策的基礎の分析を完結させ、その成果を拙稿「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程」の完結という形で公表するとともに、(2)ドイツにおける重複処罰禁止の原則の政策的基礎に関係する資料の収集・通読・精査を実施することが目的となっていた。 平成23年度の研究においては、論文という形で成果を示すことはできなかったものの、(1)についても(2)についても一応の進展があったものといえる。特に、(1)については、「比較法学」45巻2号256-259頁(早稲田大学比較法研究所)において比較的新しい米国における最高裁判例(Renico v. Lett,559 U. S.__(2010))の概要の紹介をするとともに、同判例についての解説を執筆した(この判例解説についても、2012年度中には公表できる予定である)。また、米国における二重の危険に関する重要な論文も収集することができた。 そして、国内出張を通じて、裁判員制度の現状及び理論的な課題、公訴時効の政策的基礎(二重の危険の政策的基礎と共通する部分がある)、韓国における国民参加の裁判制度の現状と課題、英国における司法取引等についての新たな知見を得ることができた。これらの知見は、米国における二重の危険の政策的基礎、答弁取引後の二重の危険、さらには、日本の裁判員制度の下での二重の危険の意義を巡る問題についても一定の示唆を与えてくれるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度における研究の目的は、上記のとおり、(1)米国における二重の危険の政策的基礎の分析を完結させ、その成果を公表するとともに、(2)ドイツにおける重複処罰禁止の原則の政策的基礎に関係する資料収集等を実施することであった。 ただ、本年度は本研究科における刑事訴訟法関連科目についてのカリキュラム改革の過渡期にあたっていたこともあり、教育面での負担が大きく、当初の計画段階で想定していたよりも研究に時間を割くことができなかったため、「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程(8)」以降を公表し、同論文を完結させることにより、(1)を実現することはできなかった。 もっとも、上記のとおり、その準備作業だけは地道に進めることができたと考える。 また、(2)についても、ドイツにおける重複(二重)処罰禁止の原則の基本的な考え方自体については把握できたため、主に平成25年度における執筆活動のための下準備は地道に進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、米国における二重の危険を巡る議論を再確認した上で、「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程(8)」及び「同(9・完)」を執筆し、少なくとも前者については同年度中に成果として公表し、さらに、後者についても、遅くとも平成25年度前半には公表する予定である(これにより、上述の目的(1)は一応達成されることになる)。 そして、上述の目的(2)については、平成24年度中にさらに下準備を進め、平成25年度中には論文という形で成果を発表する予定である。 なお、本研究と関連する内容で、平成24年度及び平成25年度中に、『研修』(法務総合研究所)、『曽根威彦先生・田口守一先生古稀祝賀論文集』(成文堂)において論文を執筆・公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、主に、平成23年度には発見し切れなかった(なお、「収支状況報告書」の「次年度使用額」は、当初想定していたよりも発見できた関連図書が少なかったことが原因で発生しているものと考える)、あるいは新たに発行されたアメリカ法(二重の危険関連)及びドイツ法(重複処罰禁止の原則関連)の文献、さらには、日本における二重の危険・一事不再理効に関連しうる文献等の購入・複写のために、研究費を使用する。その総額は、当初平成24年度において文献購入・複写のために計上していた額に、上記の「次年度使用額」を加えた額である(15万円+25万4450円)。 また、平成24年度においても引き続き資料収集や、学会・研究会出席を通じての研究報告及び意見交換のための国内出張(学会については大阪大学が、研究会・資料収集については主に早稲田大学、東京大学が行き先となる)を行うことになるため、その往復旅費等のために研究費を使用する(20万円)。 さらに、印刷等に関する消耗品として、印刷用紙・トナーカートリッジ等が必要となるため、それらの消耗品の購入についても研究費を使用する(5万円)。
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