2012 Fiscal Year Research-status Report
二重の危険の政策的基礎―二重の危険の再構成に向けて―(1)
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23730063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80318716)
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Keywords | 刑事訴訟法 / 二重の危険 |
Research Abstract |
本研究(平成23年度~25年度)においては、(1)米国における二重の危険の政策的基礎(underlying policy)の分析を完了し、(2)ドイツにおける重複処罰禁止の原則の政策的基礎を分析するという二つのことが目的となっていた。 平成24年度においては、連載中の拙稿「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程」の第8回・第9回を執筆・公表することを通じて同論文を完結させるという目標は達成できなかったものの、二重の危険にも関係するテーマについての①論文執筆・公表(「一部起訴と裁判所の審判の範囲に関する一考察―検察官の『合理的裁量』と一事不再理効の客観的範囲の『関係』を中心に―」研修773・3-16(2012年11月))、②早稲田大学刑事法学研究会における個人報告の担当(報告題目は「一部起訴と裁判所の審判の範囲」、2012年12月実施)、③米国最高裁判例紹介の執筆(2013年度中に『比較法学』(早稲田大学比較法研究所)において公表される予定である)等を通じて、その準備作業はある程度進めることができたと考えている。なお、①では、検察官の審判対象設定権と裁判所の審判の範囲の関係を主に論じたものであるが、その中で、本研究と関連する一事不再理効の機能(一事不再理効が検察官の審判対象設定権を制約するかどうか)についても検討した。②でも、いわゆる「親告罪の一部起訴」や「かすがい外しの起訴」等の場面における一事不再理効の機能という問題点への言及を含む研究の成果を報告した。さらに、③では、手続打切り後の再審理と二重の危険の関係について判示したBlueford v. Arkansas, 132 S. Ct. 2044 (2012)の紹介を行った。 また、(2)についても、資料の収集・精読を通じて、ドイツにおける重複(二重)処罰禁止の原則に関する新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においては、上述の通り、本研究と関連するテーマで論文を執筆し、それが平成24年11月に『研修』(法務総合研究所)に掲載されたほか、関連するテーマでの研究会報告や最高裁判例の紹介を行い、また、ドイツにおける重複処罰禁止の原則に関する論文執筆についての下準備はある程度進んだものといえる。 ただ、上述の通り「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程(8)」及び「同(9・完)」を執筆し、少なくとも前者を成果として公表するという目標は達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、二重の危険に関する論文を『曽根威彦先生・田口守一先生古稀祝賀論文集』(成文堂)において公表する予定であるとともに、「アメリカ合衆国における二重の危険の発展過程(8)」・「同(9・完)」についても執筆を進める予定である(執筆終了後の公表方法については、「同(1)~(7)と併せて著書の形で公表することも念頭に置いて作業を進めている)。 なお、ドイツにおける重複処罰の禁止に関する研究については、平成25年度中にさらに準備を進めた上で、平成26年度中に論文を執筆し、公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、主に、平成23・24年度には発見し切れなかった(このことが「次年度使用額」の生じた主たる原因と考えている)、あるいは平成25年度になってから新たに発行されたアメリカ法(二重の危険関連)及びドイツ法(重複処罰禁止の原則関連)の文献、さらには、日本における二重の危険・一事不再理効に関連する文献等の購入・複写のために、研究費を使用する。その総額は、当初平成25年度において文献購入・複写のために計上していた額に、平成(23年度・)24年度からの繰越分を加えた額である(15万円+54万2046円)。 また、平成25年度においても引き続き資料収集や、学会・研究会出席を通じての研究報告及び意見交換のための国内出張(学会については中央大学が、研究会・資料収集については主に早稲田大学、東京大学が行き先となる)を行うことになるため、その往復旅費等のために研究費を使用する(20万円)。 さらに、印刷等に関する消耗品として、印刷用紙・トナーカートリッジ等が必要となるため、それらの消耗品の購入についても研究費を使用する(5万円)。
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Research Products
(1 results)