2012 Fiscal Year Research-status Report
新時代の刑事手続における「事実解明」の意義に関する総合的研究
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23730065
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 慎司 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10293854)
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Keywords | 裁判員制度 / 核心司法 / 事実認定 / 伝聞法則 / 少年審判 |
Research Abstract |
わが国において、刑事手続の俎上にのぼるべき(刑事手続における解明の対象とされるべき)「核心的事実」とは何かを明らかにし、また「核心司法」論と被害者や国民の抱くあるべき刑事手続(における事実解明)像との懸隔の状況(その有無も含めて)及びそれへの対応如何を検討することを試みるという目的のもと、前年度に引き続き、(裁判員裁判を含む)近年の公刊されたわが国の刑事裁判例を収集するとともに、裁判員制度等の運用に関する各種実態調査資料を収集し、これらの分析を行った。また、捜査手続のありかた等をめぐって審議継続中である法務省・法制審議会の議事録等の資料を収集し、これを分析する作業も、前年度に引き続いて行った。加えて、諸外国の刑事裁判に関する文献資料を収集し、当該国における刑事手続の事実解明機能のありかたを、わが国のそれと比較しつつ分析する作業も、継続して行った。 特筆すべき具体的な研究実績として、まず、法務省および最高裁の裁判員制度に関する有識者懇談会等の議論状況を踏まえたうえで、いわゆる「書証から人証へ」の動きを理論的にどう評価すべきかを検討するとともに伝聞法則の解釈・運用のありかたについて提言を行う論文を公表した。また、平成24年12月に公表された最高裁事務総局「裁判員裁判実施状況の検証報告書」を、上記論文で示した私見に照らして検証する作業を行った。さらに、大阪地方裁判所で開催される研究会に参加して得られた知見をもとに、裁判員裁判全般の運用の現状とその問題点を独自に分析する作業を開始した。加えて、刑事手続に隣接する少年審判手続における事実認定のありかたについて、法制審議会少年法部会での議論も踏まえつつ、独自の分析・検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成に必要な国内外の文献資料その他の情報の収集・分析は、概ね順調に実行できている。また、研究目的に関連する個別トピックについて、既に複数の論文を執筆し、公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に引き続き、国内外の関連する文献資料の収集・分析を継続するとともに、その対象(例えば研究の対象国)を拡大する。内外の研究会や学会等に積極的に参加することで、文献に限定されない情報の収集にも努める。 既に行った種々の分析・検討のうち、未公表のものについては、論文等の形で早期に公表することを目指す。 研究の対象領域としては、裁判員裁判における事実解明のありかたを中心としつつも、非裁判員裁判や、被害者参加が行われる裁判、さらには捜査段階等における事実解明のあり方についても、検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究目的の達成に必要な国内外の文献資料のうち、24年度までに収集できなかったものを購入することを中心として使用する予定である。収集した文献資料の整理・分析および論文執筆に必要な機器の購入や、研究会等への参加に要する旅費のために使用することも検討している。 なお、次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、24年度内に納品可能かが不確実な文献資料の購入を控えたためであり、次年度以降に請求する研究費と合わせて文献資料の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)