2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730067
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
原田 和往 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (20409725)
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Keywords | 刑事訴訟法 / 公訴時効 / 迅速な裁判 |
Research Abstract |
平成25年度は,時の経過による証拠散逸について,公訴時効に代わる個別の対応措置の構築を目的として研究を実施した。まず,アメリカ法における適正手続条項に関する議論,特に,被告人が,捜査・訴追の遅延あるいは,証拠物の不適切な管理等の捜査・訴追機関側の事情による証拠の散逸を主張した場合の法的対応に関する議論の現況を確認し,あり得る対応及びその理論的根拠等を分析した。その結果,以下の知見を得た。 当該問題領域における議論は,大別すれば,(1)適正手続条項違反が認められるのは,捜査・訴追機関の悪意(bad faith)が証明された場合に限られるとする立場と,(2)悪意は必須の要件ではなく,違反に係る判断は,①証拠の類型,②原因とされる行為の態様,③利用可能な証拠を総体的に捉えた場合の当該証拠の重要性などの諸事情を考慮する比較衡量によるべきとの立場とに分かれ,展開されている。前者は,警察官の不適切な証拠管理に関し,被告人が適正手続条項違反を主張したのに対し,悪意の証明がないとして,これを斥けた1990年の連邦最高裁のYoungblood判決に代表されるものである。近年にも同旨の判断が示されており,前者は連邦法の領域で確立した先例となっているが,前記判決で有罪とされた者が,後のDNA鑑定で無実であることが明らかになったこともあり,州法の領域では後者を採用するところも少なくない。これらの対立の背景には,条項違反の根拠――捜査・訴追機関の不正行為の防止か,被告人に対する公正な手続の保障か――のほか,救済措置の多様性,捜査・訴追機関の措置に対する事後的検証の実効性及び負担等をめぐる考え方の違いがある。 以上の比較法的知見をもとに,近時の公訴時効制度改正をめぐる議論における,証拠散逸という事態に対する評価を分析しながら,わが国の現状に適用可能な部分を選別し,個別対応策の試論を構築した。
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