2012 Fiscal Year Annual Research Report
取調べの録音・録画制度のあり方および刑事司法に及ぼす影響
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23730071
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀田 周吾 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (30381437)
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度までの成果(一部は堀田周吾「取調べの録音・録画と合衆国裁判 所の監督権」法学会雑誌53巻1号に掲載(平成24年7月))に基づき、また、それを発展させる形で、アメリカ合衆国の状況をさらに調査するとともに、国内における今後の刑事司法制度のあり方を考察することに充てた。 現地の状況を直にみるため、平成24年9月にアメリカ・ボストンに渡航した。マサチューセッツ州最高裁判所は2005年に、取調べの録音・録画に関して注目される判決を出しているところ、同州上訴裁判所のガリー・カッツマン裁判官に面会し、実務の状況や同裁判官の意見を聴いた。また、サフォーク郡上級裁判所のジェラルダイン・ハインズ裁判官より、そうした証拠が公判廷に出てくることは稀であるなど、実務の状況について詳しく聴く機会を得た。加えて、ハーバード大学において在外研修中の裁判官(東京地方裁判所)とも意見交換を行った。 アメリカにおいて取調べの録音・録画制度が部分的に定着しつつある背景には、(1)いわゆるミランダ・ルールの空洞化に伴い、自白の任意性評価の実質化傾向が認められること、(2)被疑者の供述に過度に依存せずに刑事手続が運営されていること、(3)取調べ以外の捜査手段の活用により、真相の解明に向けたプロセスの効果を全体として維持していること、が指摘できる。これらは、日米の比較において、有効な視点であると思われる。 以上を踏まえ、わが国における取調べ録音・録画制度について概論的な考察を行った成果は、堀田周吾「取調べの可視化」法学セミナー698号(平成25年2月)にまとめた。また、通信傍受やDNA型データベース、おとり捜査・仮装身分捜査など新しい捜査手段の活用の可能性を考察した成果として、堀田周吾「多様な捜査手段と被疑者取調べの今後」警察政策15巻(平成25年3月)を公表した。
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