2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730083
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内海 博俊 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70456094)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 |
Research Abstract |
平成23年度においてまず試みられたのは、ドイツ法およびスイス法を中心とする外国法研究である。より具体的には、訴訟における裁判官による損害賠償額の確定という局面がどのようなものとして理解され、そこにどのような規律が及ぶ(及ばない)のかについて、19世紀中頃から現代に至るまでの当地における議論の展開を追跡する作業が試みられた。もっとも、そのうち基礎的な作業についてはすでに一定の成果の蓄積があるので、これを基礎としつつ、視野をさらに拡大しながら検討をさらに深めていくと同時に、成果として公表可能なレベルに研究の精度を高めることが主要な課題となった。そして最終的に、「法学協会雑誌」上に、「訴訟における損害賠償額の確定に関する一考察(一)~(三)」として成果を公表することに漕ぎつけた。そこでは、端的に記せば、損害賠償額の確定を規律しようとする訴訟法規定が、その誕生以来複数の理解を受容可能なものであり続けている一方で、実体法からの強い方向付けがはたらくことによってその理解が次第に限定されあるいは収斂していく過程が描写されている。 他方、上記のような外国法研究から得られる示唆を日本法の解釈あるいは運用に生かすための提言を行う準備作業も併せて進められた。実体法の各関連分野および手続法に関する多数の文献を収集したほか、各種研究会において最新の議論にも接することができた。また日本における過去の議論の展開についてのリサーチも併せて進められた。日本においても、損害賠償額の確定とここにかかわる訴訟法規定には複数の理解がありうることになるが、そのどれが適当であるのかについては、その周辺、とくに実体法における議論状況の違いを理解した上で論ずる必要があると考えられる。もっとも、日本法に関する研究については、なお中途段階にとどまっており、その成果の公表は次年度を待つこととなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災による立ち上がりの遅れはあったが、本課題にかかる研究は概ね順調に進展している。すなわち、平成23年度においてはまずは外国法のリサーチに重点をおき、その成果を当該年度内において公表するという目標を達成することができた。そして、日本法にかかる研究については、平成23年度中に外国法研究と並行して進めつつ、その公表については平成24年度になるということも、計画されたとおりの状況である。その準備も概して順調に進んでおり、平成24年度中に公表することができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、次年度が最終年度となる。次年度においては、本年度その成果の公表に至った比較法研究の成果を踏まえた日本法に関する提言をまとめ、これを公表することが目標となる。方法としては、前年度に引き続き文献の収集調査と、研究会等への参加による最新の議論への応接を行い、他方、必要な範囲では外国法に関する補充的な調査を行うなどして、情報のアップデートに務めながら、成果のとりまとめを進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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