2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730085
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧 佐智代 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40543517)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 断定的判断の提供 / 金融商品販売法 / 消費者契約法 / 不法行為 / 金融商品取引 / 投資取引 |
Research Abstract |
1.具体的内容本研究の最終目的である「市場志向型投資家保護法」の構築の前提として、この法構想が、これまでに「市場の環境整備」のための法として立法化されてきた法律とは、いかなる意味で異なるものであるのかを明らかにすることを目的とした。そのため、具体的には、投資勧誘場面においてなされる「断定的判断の提供」行為について民事責任規定を有する消費者契約法と金融商品販売法の二つの法律を素材として、これら法律の立法・改正過程および規定の構造を比較することにより、共に市場の環境整備のための法と称されてきた両法律が、「投資家保護」と「市場秩序の構築」という二つの要請に対して全く異なった態度を内包していることを明らかにした。すなわち、両法は、契約からの離脱ないし損害賠償という方途で、共に「事後的に」消費者・投資家に救済を与えるという形で、消費者・投資家保護の思想の実現が図られているが、しかし、金融商品販売法の立法過程においては、同時に、かかる民事責任規定を設けることにより市場参加者に対してかかる責任発生を事前に回避しようとするインセンティブを付与することにより、適正な投資勧誘がなされるべく市場全体を育成するという目的論的思考がなされており、実際に、具体的規定にかかる思想が昇華されているという点である。以上の検討内容については、平成23年度日本私法学会第75回大会において個別報告をおこなった。2.意義・重要性民事責任規定の設定により対面取引の規律のみならず市場全体への影響力行使をも目的とするという発想は、従来の民法学においては、せいぜい対面取引規律の反射的効果としてしか認識されておらず、そのため、民法学においては消費者契約法と比して金融商品販売法の意義・位置づけは十分に評価されてこなかったが、本研究により、金融商品販売法がいかにイノベイティブな法律であるかが明らかになったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、投資市場をめぐる我が国のこれまでの法構想についての分析を終えて、比較法として、英米投資勧誘法制に関する資料の収集および分析を行った。具体的には、英国および米国の投資勧誘規制をおこなう「民事救済法理」に関する論文および判例を収集し分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの順調な進捗状況に鑑みると、今後の推進方策については、特段の変更の必要性は存しないものと考える。平成24年度においては、平成23年度に収集した英米の民事救済法理について継続して検討を行う他、SEC等の業法的規律についても検討を行う予定である。また、市場参加者へのインセンティブ付与という視点による投資家保護法の構築には、いわゆる法と経済学ないし法の経済分析の手法についての理解が必須となるため、引き続き同方法論に関する文献の収集および習得に励む。なお、23年度研究費につき発生した未使用額は、年度末に旅費支出を予定していたところ、大雪のために旅程の実行ができず、年度末のために急遽振替が困難なために発生したものであり、研究の推進方策に影響はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、引き続き英米における投資市場法制に関する文献収集を行うため、「英米契約法関係図書」、「証券取引法学関係図書」の他、方法論に関して継続的な学習・習得が必要であるため、「法の経済分析関係図書」、「金融論関係図書」の物品費を多く割り当てる計画である。また、文献収集および研究会での成果報告のための旅費を予定している。
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Research Products
(1 results)