2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730087
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白石 友行 三重大学, 人文学部, 講師 (00571548)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 契約不履行 / 損害賠償 / 民事責任 |
Research Abstract |
本研究は、これまでの研究で抽出していた賠償モデル・履行モデルという2つの理論枠組みを用いた、(1)契約不履行に基づく損害賠償に関わる諸問題についての実定法及び学理的議論の分析、(2)各モデルの実践的・社会的意義及びその背景の探求、(3)前提となるモデルが契約不履行法、民事責任法、及びそれらの体系化に及ぼす影響の考察、(4)2つの理論モデルの解釈及び制度設計のための枠組み構築を行うことを目的としている。このうち、23年度は、(1)(2)を完成させ、更に(3)に着手した((4)は本研究の総括に位置付けられる)。 (1)について。契約不履行に基づく損害賠償の性質と対象に関わる4つの具体的問題、帰責事由の意義、損害賠償の性質(消滅時効、証明責任)、損害要件の意味、損害賠償の範囲に関して、従来の議論は、契約不履行に基づく損害賠償を不法行為に基づく損害賠償と同じ賠償の論理で捉える理解を前提としていたために、克服しがたい理論的・実際的問題を生じさせていたこと、契約不履行に基づく損害賠償を契約実現の論理の中で捉えるならば(報告者の構想)、民法の条文・体系、判例法理や実務に適合的で、かつ契約の特性を反映させた議論が展開されうることを明らかにした。(2)について。フランス法との対比を通じ、2つの理論モデルを歴史的・社会的背景の中に位置付けることによって、従来の理解=賠償モデルが普遍的・絶対的なものでなく、被害者に対する賠償の提供という実践的な意図の下に生成されてきたこと、しかし、今日においては契約によってこの目的を実現する必然性はないこと、履行モデルが歴史的かつ今日の社会的背景の下で正当化されうる論理であることを明らかにした。(3)については、2つの理論モデルを用いて、契約不履行に基づく損害賠償と履行請求・解除との関係、不法行為に基づく損害賠償との関係を検討し、賠償モデルに内在する理論的問題の抽出、履行モデルからの体系化に取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)契約不履行に基づく損害賠償に関わる諸問題についての実定法及び学理的議論の分析、(2)各モデルの実践的・社会的意義及びその背景の探求、(3)前提となるモデルが契約不履行法、民事責任法、及びそれらの体系化に及ぼす影響の考察、(4)2つの理論モデルの解釈及び制度設計のための枠組み構築という4つの柱からなる。当初の計画では、23年度に(1)(2)を、24年度に(3)を中心とする研究を行う予定であった((4)については両年度)。本年度は、(1)(2)の研究に見通しをつけ、(3)の研究に着手したので、当初の計画よりも進展しているとは言える。もっとも、(3)の研究は、契約不履行法・契約法・民事責任法全体を視野に入れた包括的な考察・分析を要求するものであり、そのためには、多くの文献・判例を読み込み、分析する必要がある。この点から見れば、おおむね順調に進展していると評価するのが適切である。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度は、契約不履行に基づく損害賠償に関する理論モデルが、契約不履行法及び民事責任法の体系化に及ぼす影響を考察する。前半には、主に契約不履行法との関係が、後半には、おもに民事責任法との関係が検討されることになる。 より具体的に言えば、(1)契約不履行に基づく損害賠償と解除、履行請求、代金減額請求との関係を、2つの理論モデルを用いて分析する。解除、履行請求、代金減額請求それ自体についての先行研究を分析し、その成果を基に、契約不履行に基づく損害賠償の理論枠組みという視点から、従来の議論における救済手段の把握のあり方に問題が内包されていることを明らかにする。また、(2)2つの理論モデルを用いて、契約不履行に基づく損害賠償が作用する領域を検討し、不法行為責任との競合が問題となる場面の有無、その場合の適用関係のあり方を分析する。 こうした研究と並行して、契約不履行に基づく損害賠償に関する2つの理論モデル(とりわけ、本研究が提示する履行モデル)を、現行民法の解釈理論として構築し、かつ、制度設計のあり方を探求する際の準拠モデルとして提示する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題が対象とする契約不履行に基づく損害賠償、契約不履行法、損害賠償法については、これらを論じた資料・文献が多いために、多額の図書購入費、文献複写費を必要とする(図書関係費、複写費)。また、古典的な文献、既に入手不可能になっている文献に関しては、文献の複写を行う必要があり、それが許されないときには、取り寄せて、あるいは、所蔵場所に赴いて閲覧しなければならないので、そのための費用が必要となる(旅費、複写費)。更に、企業や法曹実務家、他の研究者との情報・意見交換を行い、研究会で報告するための旅費も必要となる(国内旅費)。
|
Research Products
(3 results)