2011 Fiscal Year Research-status Report
身元保証の実証的研究:企業の身元保証の利用と意識に関する実態調査
Project/Area Number |
23730088
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
能登 真規子 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60378429)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 身元保証 |
Research Abstract |
平成23年度~25年度に行う本研究は、現代の身元保証の実態を明らかにすることを目的としている。初年度である平成23年度においては、平成24年度に実施する実態調査に先立ち、判例・裁判例としてあらわれた過去20年間の事例の分析・検討を行った。詳細は、「身元保証の裁判例」として彦根論叢392号(2012年6月)以下で公表する。そこで検討した内容は以下のとおりである。 保証に関する学説・裁判実務の今日の中心的問題領域は、金融取引における保証、とりわけ貸金等根保証である。身元保証は、1933(昭和8)年の「身元保証ニ関スル法律」(以下、身元保証法)の成立により民法とは異なる規律が課せられるに至っており、それ以降、身元保証の法的な問題点はあまり意識されてこなかったといってよい状況にある。しかし、保証人の保証意思を重視し、保証人の過重な負担に批判的な昨今の保証制度を巡る議論の状況をふまえると、身元保証契約だけが放置されていてよいというものではない。 わが国では、「身元保証」ないしそれに類似する語が、身元保証法の定める被用者の行為により使用者の受けた損害を賠償することを約する身元保証契約以外の場面でも、しばしば用いられている。いずれも、その場その場で不可欠のものとして、たとえば書面の提出が要請される。しかしながら、それによってもたらされる法的効力は均質ではない。雇用に伴う身元保証は身元保証人に過大な責任をもたらす危険性のある契約であるが、ここ20年の裁判例を見る限り、いまだ廃れたとはいえない。裁判所には、身元保証法5条により、身元保証人の損害賠償の責任及び金額について広汎な裁量が認められているものの、身元保証人に対して何千万円もの賠償責任が命じられる例もある。 以上より、身元保証についても、契約の成立、内容の双方からの見直しの必要性があると確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成23年度における研究計画では、身元保証にかかわるこれまでの判例を含む、必要な先行研究を渉猟するとともに、それに基づき、身元保証契約に対する企業の考え方や、実際の身元保証契約のあり方を確認するための調査票を作成し、実態調査を実施するための準備をする予定となっていた。 かかる予定をふまえて、平成23年度は、過去20年間の裁判例から「身元保証」で検索しヒットした約200件の裁判例についてその内容を確認し、特に、身元保証人に対する責任追及がなされた38件を絞り込んだうえで、それらについて整理・検討することを通じて、身元保証契約における問題点を抽出する作業を行った。平成23年度に実施した研究を通じて、平成24年度に実施予定としている実態調査の調査票に織り込むべき質問項目について整理が進んだ。 以上のとおり、平成23年度の当該研究課題の研究は、当初の計画どおりに進んでおり、進捗状況はおおむね順調であるものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、リストアップした企業に対して調査票を送付・回収し、回収したデータの集計およびその分析を行う。送付を受けた文書(身元保証書の様式など)を整理する。 平成25年度は、集計したデータをもとに論文・報告書を作成し、研究成果を公表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)は実態調査の実施年であるので、調査票の作成、印刷、送付、整理を中心に研究費を支出する。 平成23年度からの繰越分も、実態調査の実施費用として利用する予定である。
|
Research Products
(1 results)