2011 Fiscal Year Research-status Report
民事執行手続への責任財産性の反映のあり方に関する研究
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23730092
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青木 哲 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40313051)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 民事法学 / 権利能力なき社団 / 強制執行 / 不動産登記 |
Research Abstract |
本研究は、金銭執行の手続に責任財産性を反映させる手続のあり方をより一般的に明らかにすることを目的とし、平成23年度は、関連する立法の検討と裁判例の分析を通じて、日本法における問題の所在を明確にすることを計画していた。この計画に沿い、登記された不動産について登記事項証明書の添付が必要としている民事執行規則23条について検討を行い、また、権利能力のない社団の債権者による第三者名義で登記された不動産に対する強制執行および仮差押えについて判示した、最判平成22年6月29日民集64巻4号1235頁および最決平成23年2月9日民集65巻2号665頁の分析を行った。その結果、不動産執行において執行債務者と登記名義人とが一致することの必要性の根拠を明らかにするとともに、権利能力のない社団の構成員の総有に帰属する不動産に対して、第三者名義のままで強制執行や仮差押えの手続を開始する際に必要となる文書の意義を明らかにすることで、日本法における問題の所在を明確にすることができた。このような成果を得たことは、権利能力のない社団の債権者による第三者名義で登記された不動産に対する強制執行および仮差押えの手続の具体的なあり方を考えるうえで重要な意義を持つとともに、より一般に、不動産執行の手続において、その対象不動産が執行債務者の責任財産に帰属することを、登記に基づいて判断することの意義を明らかにし、例外的に、他の文書によりこのことを明らかにすることの許容性を検討するうえで、重要な前提となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、金銭執行の手続に責任財産性を反映させる手続のあり方をより一般的に明らかにすることを目的としているところ、平成23年度の研究により、不動産執行において、執行債務者が登記名義人とされていることが必要とされていることの根拠を明らかにすることができた。これにより、不動産執行について、執行債務者が登記名義人である場合に、対象不動産が執行債務者の責任財産に帰属しないことを強制執行に反映させる手続のあり方、および、執行債務者が登記名義人ではない場合に、対象不動産が執行債務者の責任財産に帰属することを強制執行に反映させる手続のあり方について検討をする際の、前提となる問題について理解を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日本法における立法の検討と裁判例の分析を通じて、日本法における問題の所在を明確にする。具体的には、立法の検討として、信託財産に属する財産に対する強制執行についての信託法23条対象とし、裁判例の分析として、第三者異議の訴えにおいて法人格否認の抗弁を肯定した最判平成17年7月15日59巻6号1742頁を対象とする。 並行して、日本法における問題の所在をふまえて、ドイツ法の文献調査を行う。具体的には、執行力の範囲と第三者異議の訴えを中心に、ドイツ民事執行法を調査し、分析する。また、ドイツの登記制度について、調査をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ドイツおよび日本の民事法関連図書の購入、収集した文献および作成した文書の整理のための記録用メディアおよび文具の購入,ならびに,東京での研究会への出席および国立国会図書館における文献収集のための国内旅費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)