2012 Fiscal Year Research-status Report
拡散的権利の適正かつ実効的な保護のための民事訴訟手続にかんする比較法的基礎的研究
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23730093
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
濱田 陽子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50368586)
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Keywords | 拡散的権利 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は、費用対効果の点から各権利者による個別の権利行使が事実上期待できないとされている、いわゆる拡散的権利を有する者が、その適正かつ実効的な実現を求めて司法にアクセスするための民事訴訟手続上の解釈論または立法論を提示することである。 平成23年度には、拡散的権利の集合的救済制度にかんする先行研究を分析するとともに、立法作業が進行中であった日本における集合的消費者被害回復制度の内容について、問題点の抽出を行った。平成24年度には、アメリカにおける拡散的権利の保護・実現のための制度について研究を開始し、アメリカにおける先行研究の収集に従事した。 1.先行研究について アメリカにおいて拡散的権利はクラス・アクションを通じて実現されているが、クラス・アクション制度については2005年のクラス・アクション公正法(Class Action Fairness Act)の評価も含め賛否が分かれている。手続的には濫用的な制度利用や、クラス代表者の要件、最終的にクラス構成員の利益に資さない和解にかんする議論は多いものの、個別の権利者に着目した研究は少なく、なお一層の調査が必要であることが判明した。 2.研究対象について アメリカでは州によってはクラス・アクションの制度がない等の理由で、クラス・アクションとは別の方法で拡散的権利の保護を試みている法域がある。集合的な権利保護制度の実効性を検証するために、集団的訴訟によらない権利保護の方法の有用性と問題点を分析し、クラス・アクションを利用する場合と比較検討することが有効であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の遅れを取り戻すべく努力したが、遅れを完全に取り戻すことができず、また新たな観点からの分析の必要性も生じたため、当初予定してたアメリカにおける資料収集・調査に不十分な点が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、アメリカ法にかんする調査・研究の不足部分を補うとともに、そこで得られた示唆をもとに、日本の消費者の財産的被害の集合的な回復のための民事裁判手続の特例に関する法律(案)の適正かつ有効な解釈、紛争の管理・運営方法を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、平成24年度に引き続き、①アメリカ法にかんする文献・資料の調達(物品・書籍の購入)、②アメリカにおける調査・資料収集(旅費、書籍等の購入、謝金等)、③収集した資料の整理・分析(事件費、物品の購入)のために研究費を使用する予定である。
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