2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730101
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
足立 文美恵 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (50433058)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 離婚後扶養 / 補償給付 / 財産分与 |
Research Abstract |
本研究は、離婚時の財産分与(民法786条)について、今後の立法及びその解釈の方向性を示すことを目的としている。本研究は、財産分与における「補償」の概念及び決定基準について、今後のあり方を検討することに焦点を当てている。 この目的を達成するため、本研究は、アメリカ法律協会の『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理を分析し、日本における「補償」の概念及び決定基準を検討することを研究の計画としている。平成23年度は、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理を分析することを計画とした。分析の方法として、(1)『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理は、判例及び学説に基づいて確立されたものであるため、この原理に関する判例及び学説の研究を行い、(2)イギリスでは『婚姻解消法の原理』に対する批判的論文集が出版されているため、この論文集を中心に「補償」の原理に関する問題点等の検討を行うことを計画した。 平成23年度は、英米法の判例及び論文をインターネットにより収集することのできるシステムを用いて、(1)及び(2)に関する資料を収集し、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理を分析した。この分析により、「補償」の原理について、概念、決定基準、理念、立法及び活用された際の適用方法が明らかになった。 これらは、日本の財産分与における「補償」の概念及び決定基準を検討するための貴重な資料となり、重要性が高い。日本における「補償」は、離婚後扶養の概念及び決定基準が不明確であることが問題とされて主張された概念である。『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理は、概念及び決定基準が明確であり、日本の財産分与における「補償」を検討する上で、参考とすべき点が多く、日本の財産分与のあり方に重要な意義を有すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、財産分与における「補償」の概念及びその決定基準を明らかにし、「補償」の立法及びその解釈の方向性を示すことを目的としている。この目的を達成するため、本研究は、アメリカ法律協会の『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理を分析し、日本の財産分与における「補償」の概念及びその決定基準を検討することを研究の計画としている。 交付申請書に記載した研究計画では、平成23年度は、アメリカ法律協会の『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理を分析する。平成24年度は、現地調査を行い、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理が各州の立法・裁判実務に影響力を与えているか否か調べ、「補償」の原理に問題点がないかを明らかにする。平成25年度は、平成23年度から平成24年度において調査した内容をまとめて、日本における「補償」のあり方を検討する。 平成23年度は、交付申請書に記載した研究計画に従い、研究を実施した。具体的には、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理が判例・学説に基づいて確立されたものであるため、この原理の基礎となるアメリカの判例・学説を分析した。また、イギリスで出版された『婚姻解消法の原理』に対する批判的論文集から「補償」の原理の問題点を検討した。資料の収集には、インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用した。また、日本の財産分与の状況を把握するため、研究会等へ出席をした。 本研究は、交付申請書に記載した研究計画に従い、目的の達成に向けて進めている。現在は、平成24年度に計画をした現地調査を進めるため、平成23年度の資料をまとめている。以上により、本研究の現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用して、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理に関する判例・学説を収集した。また、日本の財産分与に関する状況を把握するため、研究会等へ出席した。 平成24年度及び平成25年度は、交付申請書の研究計画に従い、研究を実施する。平成24年度は、現地調査により、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理について、アメリカ各州の立法または裁判実務への影響力、問題点等を検討する。現地調査は、日本法と夫婦財産制を同じく別産制とするニューヨーク州で行う。「補償」の原理を積極的に採用する州があれば、その州での現地調査も行いたいと考えている。調査の準備には、インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用する。また、日本の財産分与の状況を把握するため、研究会等への出席を計画をしている。 平成25年度は、平成23年度から平成24年度の調査結果をまとめ、日本の財産分与における「補償」のあり方を検討する。インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用し、『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理について、各州の立法・判例の現状を把握しつつ、調査結果のまとめを行う。また、研究会等に出席し、日本の財産分与の状況を考慮しながら、日本の財産分与における「補償」について検討をする。さらに、本研究の調査結果及び自らの考える「補償」のあり方について、自らの考える「補償」に対する意見をより多くいただくため、報告させていただく機会を得る。研究会等で得られた意見を参考にして、自らの考える「補償」のあり方を再検討する。本研究により得られた調査結果及び再検討をした「補償」のあり方をまとめ、論文を完成させることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、(1)『婚姻解消法の原理』における「補償」の原理について、英米の判例・学説の収集、(2)日本の財産分与に関する状況を把握するため、研究会等への出席を計画した。 これらの計画を実施するため、(1)について、インターネットにより英米の判例・学説を収集することのできるシステムを利用し、(2)について、宮崎県外の研究会等へ出席した。交付申請書では、(1)(2)に関わる費用を研究費として申請したが、平成23年度は、他大学での非常勤講師を務めることにより、(1)のシステムを利用することができ、(1)に関する出費が生じなかった。また、他大学での講義などに合わせて研究会等に出席したため、(2)に関する出費も生じなかった。平成23年度の研究費は、次年度以降の現地調査の費用として利用する。 平成24年度は、(1)現地調査を行い、(2)日本の財産分与の状況を把握するため、研究会等への参加を計画している。(1)について、現地調査の準備のため、インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用する。平成24年度は、他大学での非常勤講師を行っていないため、インターネットにより英米法の判例・論文を収集することのできるシステムを利用する費用が必要となる。現地調査する州は、ニューヨーク州を計画している。「補償」の原理を積極的に採用する州があれば、その州での現地調査も行うため、そのための旅費が必要となる。さらに、(2)について、宮崎県外での研究会等へ出席をするために旅費が必要となる。 平成25年度は、平成23年度から平成24年度の調査結果をまとめ、日本の財産分与における「補償」のあり方を検討することを計画している。「補償」の原理に関する英米の判例・学説の現状を把握するため、インターネットにより英米の判例・論文を収集することのできるシステムを利用することが必要となる。(2)宮崎県外の研究会等で報告するために旅費が必要となる。
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