2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730101
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
足立 文美恵 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (50433058)
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Keywords | 離婚後扶養 / 財産分与 / 補償給付 |
Research Abstract |
本研究は、財産分与における離婚後扶養のあり方を検討するものである。離婚後扶養は、多くの学説において、その概念を補償という概念に代えるべきと主張されており、この傾向は、アメリカでもみることができる。そこで、本研究では、アメリカの離婚後扶養の状況を検討して、日本における離婚後扶養のあり方の参考としたいと考えている。 平成24年度は、平成23年度に引き続き、アメリカの離婚後扶養の状況を検討した。 アメリカでは、2002年にアメリカ法律協会(ALI)が『婚姻解消法の原理(Principles of the Law of the Family Dissolution)』を公表し、その中では離婚後扶養の概念代えるべきとして、補償に関する概念、付与・内容の決定基準の原理が各州の立法者に向けて推奨されている。『婚姻解消法の原理』は、公表時に各界から注目され、アメリカの司法へ強く影響を与えることが予想された。 『婚姻解消法の原理』の公表から10年以上が経過したが、離婚後扶養に関する各州の立法及び判例の状況は、1980年代に離婚原因法の改革によって大きく変化したものに比べると、離婚後扶養の概念、付与・内容の決定基準に大きな変化は見られなかった。 しかしながら、マリコパ郡の裁判所は『婚姻解消法の原理』を参考にしてガイドラインを作成し利用していること、2011年にオレゴン州の制定法が離婚後扶養の一類型として補償の概念を導入したこと、各州の判例に補償的意味のある離婚後扶養を付与したものがみられることなど、若干ではあるが変化も見られる。 日本でも財産分与への補償の導入が強く主張されており、アメリカにおける離婚後扶養及び補償の状況は、日本法において補償が導入されることになった際に、重要な参考となりうるはずであり、日本法における補償の概念のあり方を検討する上で重要性を有すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、財産分与における離婚後扶養のあり方を検討するものである。具体的には、離婚後扶養の代わりにすべきと主張されている補償の概念について、その概念、付与・内容の決定基準を明らかにし、今後の離婚後扶養について立法の方向性及びその解釈を示すことを目的としている。本研究は、アメリカ法律協会による『婚姻解消法の原理』における補償に関する原理を分析し、日本法における補償の概念、付与・内容の決定基準を検討することを研究の計画としている。 交付申請書に記載した研究計画では、平成24年度は平成23年度に収集した資料に基づき現地調査を行う予定であったが、平成24年度も平成23年度に引き続きアメリカにおける離婚後扶養の状況の分析を行った。その内容は、平成24年12月、研究会において報告させていただいた。報告内容は、平成25年度に研究報告として公表される予定である。なお、資料収集には、インターネットにより英米の制定法、判例、及び論文を収集できるシステムを利用した。 また、日本法における離婚後扶養の状況も把握するため、研究会への参加及び最高裁判所等の図書館での資料収集を行った。 本研究は、平成24年度に実施予定であった実地調査を平成25年度に計画している。しかしながら、平成25年度に予定していた調査結果の研究会での報告を一部ではあるが平成24年度に行っている。交付申請書に記載した計画は、年度を越えて前後してしまっているが、現在は、平成24年年度に行う予定であった実地調査の準備を行うとともに、平成25年度の計画内容のうち残された部分について実施に向けた準備を行っている。以上により、本研究の現在までの達成度は、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度及び平成24年度は、インターネットにより英米の制定法、判例及び論文の収集を行うことのできるシステムを利用して、『婚姻解消法の原理』における補償の概念に関する資料及びアメリカの離婚後扶養及び補償に関する資料の収集を行った。 平成25年度は、交付申請書の研究計画に従い、①平成24年度に予定されていた現地調査の実施を行い、②平成25年度に予定した平成23年度及び平成24年度の調査内容をまとめ、日本法における離婚後扶養のあり方を検討する。 ①現地調査は、夫婦財産制が日本と同じ別産制を採るニュー・ヨーク州で行う予定である。『婚姻解消法の原理』における補償の原理を採用したマリコパ郡の状況及び22011年に補償の概念を離婚後扶養の一類型として採用したオレゴン州の制定法の状況についても本研究に触れるところであるが、時間的な関係から、インターネットによるシステムを利用して、論文等の資料から分析したい。 ②交付申請書に記載した研究計画に従い、平成23年度及び平成24年度の調査内容のまとめを行う。また、まとめられる調査内容には、平成24年度に実施できず平成25年度に実施予定の現地調査の内容も含まれる。まとめる過程では、インターネットで英米の資料を収集できるシステムを利用して、現状の確認も行う。また、研究会等へ出席し、日本法の離婚後扶養の状況を考慮して、日本の財産分与における離婚後扶養と補償のあり方を検討する。さらに、本研究の調査結果及び自らの考える離婚後扶養及び補償のあり方について、研究会にて報告させていただく機会を得る。研究会で得られたご意見を参考にして、自らの考える補償のあり方を再検討する。本研究で得られた調査結果及び再検討した離婚後扶養及び補償のあり方については、論文として完成させることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、①アメリカでの現地調査、②平成23年度及び平成24年度の調査結果のまとめを行い、日本法における離婚後扶養及び補償のあり方を検討することを計画している。 ①アメリカの現地調査は、平成23年度及び平成24年度における調査結果に基づいて行うことを予定しているが、現地調査の事前の準備として、英米の制定法、判例、論文をインターネットで収集できるシステムを利用して、現状の確認を行う予定である。現地では、資料収集を行うほか、離婚後扶養及び補償の概念に対する見解について、法曹へのインタビューを実施したいと考えている。 それゆえ、アメリカの現地調査の旅費、インタビューに対する謝礼、日本において英米法の資料をインターネットで収集できるシステムの使用料が必要となる。 ②平成25年度は、平成23年度、平成24年度の調査結果及び平成25年度の現地調査の内容を論文としてまとめることを予定している。論文では、日本法の状況も参考として検討を行うためた、研究会等への出席、日本法の離婚後扶養及び補償に関する資料を収集するために図書館及び書店での資料収集を予定している。また、調査結果の報告を行い、報告に対するご意見も参考にして論文を完成させることを予定している。 それゆえ、論文に必要な紙等の雑費、研究会参加にかかる旅費、図書館及び書店での資料収集のためにかかる旅費、図書購入費等が必要となる。
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