2013 Fiscal Year Research-status Report
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23730101
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
足立 文美恵 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (50433058)
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Keywords | 離婚後扶養 / 補償給付 / 財産分与 |
Research Abstract |
本研究は、財産分与における離婚後扶養のあり方を検討するものである。離婚後扶養は、学説において、その概念を補償という概念に代えるべきことが有力に主張されており、この傾向は、アメリカにおいてもみることができる。そこで、本研究は、アメリカの離婚後扶養の状況を検討し、日本法における離婚後扶養のあり方を検討する際の参考にしたいと考えている。 平成25年度は、アメリカ法律協会(ALI)が2002年に公表し、離婚後扶養の概念を補償の概念に代えるべきことを推奨した『婚姻解消法の原理(Principles of the Law of the family Dissolution)』の影響力について調べることを計画していた。具体的には、夫婦財産制に日本と同じ別産制をとるニュー・ヨーク州の状況を調べることを計画していた。 しかし、『婚姻解消法の原理』の公表から10年以上が経過したが、各州の制定法において、離婚後扶養を補償に代える傾向は見られていない。また、各州の判例においても、従来型の離婚後扶養(permanent alimony、永久的離婚後扶養)と1970年代に登場した新しい型の離婚後扶養(rehabilitative alimony、社会復帰のための離婚後扶養)が依然として付与される傾向にあり、補償の付与を認めた判例はわずかである。 各州の制定法及び判例の現状から、『婚姻解消法の原理』の内容は、各州の制定法及び判例にいまだに浸透していないと考えられる。そこで、平成25年度は、『婚姻解消法の原理』の影響力を調べるのではなく、補償の概念を立法に採用したオレゴン州の現状などを調べ、『婚姻解消法の原理』の関連性や、補償に関する判例等の検討を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的は、財産分与における離婚後扶養のあり方を検討するものである。具体的には、離婚後扶養の根拠、決定基準が不明確であることから、離婚後扶養の概念を補償の概念に代えるべきことが学説上、有力に主張されているため、補償の概念、付与・内容の決定基準を検討し、離婚後扶養に代わるべき補償の概念を示すことを目的としている。 補償の概念を検討するにあたっては、アメリカ法律協会の『婚姻解消法の原理』で推奨されている補償の概念に焦点を当てて、『婚姻解消法の原理』における補償の概念を明らかにし、さらにその問題点も明らかにした上で、日本法における補償のあり方を検討することを予定していた。 そのため、平成25年度は、①『婚姻解消法の原理』の影響力を調べるため、夫婦財産制に日本と同じ別産制をとるニュー・ヨーク州の現地調査を行い、②平成23年度から平成25年度までの調査内容のまとめを行う予定であった。 しかし、『婚姻解消法の原理』の内容が各州の制定法及び判例にいまだに浸透していないと考えられるため、①の計画を変更し、補償の概念を立法に採用したオレゴン州の現状などを調べ、『婚姻解消法の原理』との関連性や補償に関する判例等について、検討を行うこととした。この結果、「研究の目的」の達成が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、①平成25年度に引き続き、アメリカにおける離婚後扶養の現状を調べたい。また、②平成23年度からの調査内容をまとめて、日本法における離婚後扶養のあり方を検討したいと考えている。 ①アメリカにおける離婚後扶養の現状として、交付申請書に記載した研究計画を変更し、補償の概念を立法の採用したオレゴン州の状況を中心に行う予定である。調査にあたっては、インターネットによるシステムを利用し、論文等の資料を分析したい。また、現地に行き、補償給付の状況を調べたいと考えている。 ②交付申請書に記載した研究計画に従い、平成23年度からの調査結果をまとめた上で、離婚後扶養のあり方を検討し、論文としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画では、現地調査を行う予定であったが、研究計画を変更したことにより、現地調査を実施しなかった。また、平成23年度の研究計画では、英米法の判例等をインターネットにより入手できるシステムを使用する予定であった。しかし、他大学の非常勤講師を勤め、そのシステムを使用することができたことにより、システムの利用にかかる費用を使用しなかった。 平成26年度は、①アメリカでの離婚後扶養の現状を調べる予定である。そのため、英米法の判例等をインターネットにより入手できるシステムを利用する予定である。また、アメリカでの現地調査の実施を予定しているため、システムの利用にかかる費用、現地調査の旅費が必要となる。 また、②平成23年度からの調査内容を踏まえて、離婚後扶養のあり方を検討する予定である。検討するにあたっては、日本法の現状を明らかにしたうえで、検討を行いたいと考えている。研究会等への出席及び資料収集により、日本法の現状を明らかにしたいと考えているため、旅費及び図書購入費が必要となる。
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