2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730103
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 隆幸 東北学院大学, 法務研究科, 准教授 (60387462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 面会交流 / ドイツ法 / 監護紛争支援 |
Research Abstract |
親権者が非親権者と子との交流を拒否したり、妨害したりするなど、父母が葛藤状態にあるために面会交流の円滑な実現が妨げられている場合に、第三者の関与を通じて、交流の実現を適切に援助する手法・仕組みのあり方について問題提起がなされ、議論が進められており、裁判例でも、面会交流の実現にあたり、民間団体の専門家の介在を命じた事案(東京家審平成17年7月31日家月59巻3号73頁)などが公表されており、またいくつかの民間団体によって恒常的に面会交流援助が行われている。 しかし、面会交流が監護紛争当事者にとって権利性を有するのであれば、面会交流を実施するか、または実施するとしてその内容をどのように定めるかは、裁判所の自由な処分に委ねられるということにはならない。面会交流の場面に何らかの形で第三者が関わることは、一面では高葛藤事例について親子の交流を実現しやすくするという、交流の「支援」という意義を有するが、他方では、権利であるはずの面会交流が他者によって制約されているという面も有するからである。第三者関与の問題にあたっては、その手法の有用性を評価する半面で、それが面会交流権の侵害とならないかどうかが検討されるべきである。 このような国内の状況や問題点見据えて、おもに文献研究を中心に、ドイツの面会交流支援制度についての研究を行った。BGB(ドイツ民法)は、数次の改正を経て、面会交流の実現にあたり第三者が関与する制度を整備している。またそこでは、交流の支援・援助という面が強調される一方で、交流の制限という側面にも目配りがなされ、当該制度が利用される場面の限定がなされているからである。 今年度は、以上の視点からおもにドイツ法の研究を進め、それは次年度に公表をする予定であるが、その副産物として、ドイツ交流規定の逐条解説(「ドイツ家族法注解」)や監護者指定に関する判例研究を公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内における援助状況調査については進捗が遅れている傾向にあるが、他方でドイツ法の検討は資料収集を含めて順調に進んでおり、その成果についても小論ではあるが、公表することができた(とりわけドイツ家族法研究会におけるドイツ面会交流規定の注釈)。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の文献研究を引き続き継続しつつ、今年度は、ドイツ現地での実地調査・および文献収集を行うことにする。後者については、付き添い交流や交流保護に公的機関として関与しているドイツ各州少年局(Jugendamt)と交流援助を実施している民間団体(主に、ドイツ児童保護連盟(Deuscher Kinderschutzbund)の本部および各支部)の訪問を予定している。ドイツ児童保護連盟はドイツ各州に支部があり、子の意向を裁判上代弁する職責を担っている手続保護人協会と役割分担をしながら、面会交流支援のための保護人(Umgangspfleger)による活動拠点を築いている。この実地調査により、交流援助の運用状況や各機関の連携状況を明らかにする。また交流保護人の運用状況を明らかにすることで、交流権への裁判所の関与に関する基準を析出することもあわせて試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記ドイツ民間団体および少年局における実地調査のための旅費・宿泊費が主たる用途である。加えて、国内外の文献研究も引き続き実施されるため、当該書籍代・複写依頼のためのコピー代・送料等にも予算を用いる。なお、国内での関連学会・研究会にも参加する予定であり、そのための旅費にも予算を用いる。
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