2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730106
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
田岡 絵理子 国士舘大学, 法学部, 講師 (20551039)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 民法 / 代理 / 委任 / 信託法 / 忠実義務 / 信認関係 |
Research Abstract |
平成23年度上半期は、民法における代理人・受任者が負う忠実義務規範の内容について、現在進行中の法制審議会民法部会での民法改正論議も視野に入れながら、現行民法における問題点について研究した。早稲田大学・明治大学・一橋大学の有志研究者で構成される国際取引法研究会(7月)、及び明治大学での「『民法改正を考える』研究会」にてその研究成果を報告し(7月、9月)、後者の研究会から発行される著書に論文として寄稿している。下半期は、日本信託法における受託者の忠実義務に関する文献(体系書、単行書、大学紀要寄稿論文等)の収集と分析を行い、受託者の忠実義務の内容及び法的性質について考察し、民法・信託法を横断する忠実義務規範の基礎理論についての研究を行った。受託者の忠実義務規範については、財団法人トラスト60研究会において報告している(3月)。また、比較考察の対象として、イギリス信託法上の忠実義務規範について文献収集を行い(体系書、単行書、大学紀要寄稿論文)、イギリス信託法における受託者の忠実義務の内容・法的性質についての比較考察を行った。この点に関連して、イギリス・オックスフォード大学において、Dr. Birke Haeckerと意見交換を行い、併せて同大学にて文献収集を行った(3月)。本研究出張は、「法の国際化における民事責任の総合的・比較法的研究」(基盤研究(B)課題番号22330035)からの経費によりなされてはいるも、それは、本基盤研究の個別テーマの一つである「民事責任の公正性」に研究協力者として参加しているためである。本個別テーマでは、忠実義務違反の効果についての研究を進めている。そのため、本研究出張では、忠実義務の内容・法的性質と併せ義務違反の効果についても検討対象として面談を行い、忠実義務規範の全体像についての意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本民法における代理人の忠実義務・受任者の忠実義務の内容及び法的性質については、概ね予定通りに進展しているといえる。また、日本信託法における受託者の忠実義務の内容及び法的性質についても、概ね予定通りに進展している。当初より、平成23年度は日本法の研究に重点を置くことを予定していたため、その点では全体の研究は概ね予定通りに進展しているといえる。もっとも、外国法研究に関しては、イギリス法を中心としつつも他のコモンロー諸国の忠実義務規範も検討に加える予定であったところ、イギリス法における忠実義務規範の検討に重心が若干傾いている。そのため、平成24年度は、他のコモンロー諸国についての検討の比重を重くすべきであると考える。また、海外研究者との意見交換に関しては、当初はMatthew Conaglen教授との面談を予定していたところ、日程の調整がつかず、Birke Haecker教授との面談とはなった。しかしながら、Haecker教授はイギリス信託法とドイツ信託法との比較研究を行っているため、Haecker教授との面談では、イギリス法のみならずドイツ法の視点からも比較考察ができる意見交換となったため、成果は大きかったといえる。もっとも、それがために、イギリス以外のコモンロー諸国すなわちオーストラリア・カナダ法についての疑問点が解消されるには至らなかった。この点については、平成24年度にこれらコモンロー諸国の忠実義務規範の研究により比重をおくことで、文献収集・分析を通して解消する、あるいはこれらの分野に精通する学者との面談を通して解消できるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上半期は、平成23年度に収集した資料の分析を継続するとともに、新たな資料の収集・分析も行う。新たな資料収集に関しては、とりわけオーストラリア・カナダ・アメリカの忠実義務規範に関する文献を中心に行う。これらの主要コモンロー諸国における忠実義務規範を明らかにすることで、それにアメリカ法における忠実義務規範がいかなる影響を及ぼしているかを明らかにする。そして、これらの主要コモンロー諸国が、この「アメリカの法的浸透」によっていかなる問題を抱えているかを考察し、「アメリカの法的浸透」を批判的に検討する。それによって、アメリカ法の忠実義務規範が有する問題点を浮き彫りにし、これら主要コモンロー諸国と同様に「アメリカの法的浸透」をうける日本法がいかなる問題点を有するかを明らかにする。また、アメリカにおいて国内で収集困難な資料の収集を行うとともに、アメリカ信託法・代理法の最新の議論状況を学ぶべくDeborah A. DeMott教授(デューク大学)との面談を予定する。イギリスにおいて国内で収集困難な資料の収集を行うとともに、「アメリカの法的浸透」の批判的研究を行うMatthew Conaglen准教授(ケンブリッジ大学)との面談を予定する。平成23年度における日本法の分析・検討と、平成24年度におけるアメリカの法的浸透についての分析・検討とを総合的に比較考察することで、日本法におけるあるべき忠実義務規範についての取りまとめを行う。この点については、早稲田大学の民事法研究者を中心とした有志メンバーで構成される研究会「民事法アモルフ」にて研究報告を行う。併せて、早稲田大学・明治大学・一橋大学の有志研究者で構成される国際取引法研究会にても報告を行う。上記の研究成果を論文にまとめ大学紀要、法律雑誌へ寄稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
報告資料作成のための印刷費を計上する6千円(報告1回につき3千円:報告書10頁×10円×30人分)。アメリカへの資料収集旅費として資料収集旅費160千円、滞在1週間として宿泊費80千円を確保する。イギリスへの資料収集旅費180千円、滞在1日間として宿泊費80千円を確保する。残額を資料収集費として計上する(39千円)。
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