2011 Fiscal Year Research-status Report
事業者間契約における不当条項規制をめぐる民法・消費者法・競争法の発展可能性
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23730108
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 彩 法政大学, 法学部, 准教授 (30510995)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 民法 / 消費者法 / フランス法 / EU法 / 競争法 |
Research Abstract |
本年度は、消費者法における不当条項規制立法が事業者間契約における不当条項規制に与える影響に着目しながら、近時の日仏両国で示されている事業者間契約における不当条項規制の立法モデルを分析・紹介し、また、適宜、競争法による不当条項規制にも着目し、事業者間契約における不当条項規制のあり方につき、一定の枠組みの提示を試みた。 具体的には、濫用条項規制の一般条項を設けることを提案しているフランス債務法改正準備草案をめぐる学説の動向、および事業者間契約における濫用条項規制の可能性をもたらした2008年の商法典L442-6-I第2号改正の経緯、及びそれに対する学説の反応を、民法、消費者法、競争法の概説書や論文にあたって分析した。その成果については、フランスの近時の動向に影響を与えているEUの契約法統一をめぐる動向と比較しつつ、法学志林にて2回連載の論文として公表した。 また、近時日本の民法(債権法)改正論議において見られる「事業者間契約における不当条項リスト」を定めることの意味、さらには、リストを設けるとすればどのような形(証明責任の所在)・内容(具体的にリストアップする条項)のものにするかにつき、「消費者契約における不当条項リスト」をめぐる議論を参考に検討を行うという目的のもと、消費者契約法8条や9条の問題点を中心に詳細に検討した。この成果については、2011年10月10日に開催された日本私法学会シンポジウムにて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題1年目にあたる本年度は、事業者間契約における不当条項規制の具体的な制度設計につき、フランスの近時の商法典改正および債務法改正草案をめぐる動向の分析や競争法における濫用条項規制の紹介、および、日本の従来の不当条項リストをめぐる学説の分析から考察するという立法論的検討を行うことを目的としていた。この目的に従い、本年度はフランスの商法典改正および債務法改正草案をめぐる動向について法学志林上で公表するとともに、日本の不当条項リストをめぐるこれまでの学説・裁判例の分析、および今後の課題の提示を日本私法学会シンポジウムにて報告することができた。フランス競争法規定についての十分な検討を行うには至らなかったものの、おおむね順調であったと言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年9月にフランスにて「事業者間契約における不当条項規制」についての日仏比較報告を行うこととなっている。そのため、まず、今年度の立法論的検討を前提として、民法による不当条項規制の限界について、特にフランスにおける近時の免責条項をめぐる裁判例をとりあげて解釈論的検討を行う。また、事業者間契約における不当条項規制の根拠を探求するため、フランス商法典L442-6-I第2号の「著しい不均衡」の解釈をめぐる近時のフランスの議論、および、本研究が関心を持っている「契約当事者間の不均衡」概念に親和的といえる「優越的地位の濫用」概念を競争法の概説書や論文から導き、原理的研究の端緒とする。後者については、日本民法の権利濫用論や優越的地位の濫用論とも比較し、数回に分けて論文を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年9月にフランスにて報告と調査を行うため、フランスへの旅費を支出する予定でいる。また、フランスの近時の競争法と民法の関係をめぐる論文、および、日本の権利濫用論や優越的地位の濫用論をめぐる概説書・論文を入手するための書籍を支出するとともに、成果を広く研究者に配布するための郵送費を必要とする。
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