2013 Fiscal Year Annual Research Report
契約成立段階の法的規律とその司法的性格に関する研究――契約形成論の深化のために
Project/Area Number |
23730110
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (00453986)
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Keywords | 契約法 / 債権法 / フランス法 / 比較法 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
最終年度は、特に、契約締結過程における行為が、(1)債務内容の形成を根拠づける場合と、(2)錯誤法理等を通じて契約の解消を根拠づける場合とがいかにして識別され得るかを、関連諸法理の要件論上の問題に焦点を当てて考察した。その際には、当初の計画に従って、フランス法における近年の議論動向、特に「契約の領域(champ contractuel)」の観念をめぐる議論の状況に注目した。その結果、大略、次のことが明らかになった。第一に、上記(2)の場面においても「合意」を要するとする見解が有力に主張されている(この点は、わが国の先行研究によって既に明らかにされている)。しかし、その「合意」がいかにして認定されるかについては、種々の視点が提示されながらも、議論状況はなお浮動的であり、十分に明確かつ具体的な解決が与えられてはいない。第二に、有力学説の主張を精査すると、なぜ「合意」が重視されるのかを理由づける際の論証の仕方にも、時々における論者の関心を反映して、微妙な変遷がみられた。要するに、フランス法の状況の一端を知り得たものの、そこから有用な具体的知見を獲得するには至っていない。 研究期間全体を通じて、契約内容の形成に関わる法的規律を、契約締結過程における当事者の行為、意思表示の手続的適正性を保障するという法的課題との関わりにおいて考察することを試みてきた。過年度の成果としては、わが国の法的規律の特徴を比較法的観点から考察するための示唆を得たことに、一定の重要性があったと考える。もっとも、日本法の状況に照らしてみると、抽象論を超えて、具体的な視点の設定に結実し得るような成果を獲得し得なかった憾みがあり、その点においては課題を残した。
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Research Products
(4 results)