2011 Fiscal Year Research-status Report
知的財産権の権利範囲調節の仕組みと無体財産取引の動態に関する研究
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23730117
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前田 健 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80456095)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知的財産法 / 特許法 / 著作権法 |
Research Abstract |
本年度は研究の初年度であり、主に研究の方向性を確立することに力を尽くした。まず、定常的な情報収集の場を整えるために、東京で開催される主に特許法関連の研究会のメンバーとなり、定期的に参加する体制を整えた。また、著作権に関しては、コンテンツビジネスにかかわる法曹・企業実務家との勉強会という形のネットワークを確立し、同じく情報集・意見交換の場を確立することに成功した。そして、それらの場を通じて、知的財産権をめぐる実務の問題状況についての正確な認識を得ることができた。これらの情報収集は、次年度以降も継続する予定である。特許法に関しては、特許権の保護範囲論と明細書による開示の関係について研究して助教論文の公開に向けた作業を継続した。概ね本年度中に完成に至り、次年度の早い段階で公開が可能な段階にある。さらに、これに関してその後新たに出された裁判例等の検討、及びそれらについての小論文を公表する作業も継続している。また、関連して、特許権の延長登録制度についての研究を行い、研究会にて報告を行った。その成果は、本年度3月に論文として公表された。著作権法に関しては、侵害主体論に関する裁判例の検討・研究を行い、問題状況の整理に努めた。また、問題の解決のために情報財の取引理論について研究する必要性を見出し、それらについての論説の整理及び研究を遂行した。その成果は、同論点に関する最高裁判決の判例評釈という形で学術誌に公表した。この論文はあくまで中間報告という性質を帯びており、さらに発展をさせた論説を、次年度の早い段階で学会発表及び論文の形で公表するための準備も継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若干の遅れが見られるものの、研究は順調に進行している。第一に、本研究の遂行のためには定期的な情報収集の場を立ち上げることが必要であったが、それらについては順調に確立することに成功した。その成果は公表された論文の中に有形・無形の形で貢献している。また、特許法に関しては、助教論文の公表を本年度中に終える予定であったが、それが次年度にずれこんでしまった。もっとも内容そのものについてはすでに完成しており、校正作業の遅れが原因であるため、重大な問題ではない。それ以外の短い論稿の発表も順調に行うことができたので、むしろ全体としてみれば予定よりはかどっている部分も多い。著作権法に関しては、研究の方向性を示す短い論文を発表するつもりでいたが、それに代わるものとして、最高裁に関する判例評釈を公表することができた。これは、当初の予定よりやや縮小された形の物ではある。これは、研究の遅れが原因というよりは、発表媒体の制約のためのという事務的な事情が大きい。公表されていない手稿の段階のものは予定通りの研究の進捗状況にある。次年度の早期の段階に学会報告及び論文発表の予定があるので全体としては進捗はきわめて順調である。次年度以降の研究を発展するための、情報収集、文献調査は順調に進展しており、次年度には相当程度の論文を公表できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においても、引き続き研究会等を通じた情報収集・問題点の把握を行い、さらに文献調査を深化させることによる研究の継続を行う。24年度中には、特許法に関する助教論文を公表できる予定である。また、論文の脱稿後、新たな裁判例が蓄積している分野も多いので、それらについての情報を収集し分析を行うつもりでいる。これらについては、別の論文の形で公表できることを目指している。24年度は、調査の対象を国外に広げる予定であり、欧州及び米国の実務・学界の動向に対する調査を本格的に開始する予定である。著作権法についても、まとまってきた研究の成果を中間報告書的な意味合いを込めて早期に公開する予定である。すでに学会報告を24年4月に行い、さらに論文を公表に向けて準備中である。今回公表する論文はきわめて著作権法の全体的構造についての私の見解を示す総論的でやや抽象的な部分も多いので、より具体的な諸テーマに関する論文を続けて公表できる要素の準備作業に取り掛かる予定である。著作権の権利制限規定の意義についてのより具体的な検討を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度も情報収集を継続するため、定期的な東京出張は必要であり、そのための国内旅費を使用する予定である。24年度は国外に対する調査も行うため、それらの旅費も合わせて必要となってくる。必要物品については初年度にそろえた部分も多いが、なお必要な品も多い。具体的には、新たに出た書籍、研究の進展により必要性が判明した書籍、またはコンピュータ関連の必要品について少し買い揃える計画を持っている。特に本研究において、文献調査は極めて重要な位置を占めているため、そのための費用は惜しまないようにしたい。また、24年度はいよいよ成果を大々的に公表することがはじまるため、そのための費用が必要である。書籍出版ないし論文頒布を行い、広く国内外の研究者との意見交換を可能にするためには、かなりの金額が必要になる可能性も予測される。このため、直接的な成果配布のための費用及び、旅費の使用が引き続き必要である。
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