2011 Fiscal Year Research-status Report
消尽法理の再構築-法学的及び経済学的側面からの総合的研究-
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23730118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
愛知 靖之 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40362553)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 特許権 / 著作権 / 消尽 / 知的財産の流通 |
Research Abstract |
本研究の目的は、特許法及び著作権法における消尽法理の理論的根拠の解明とその要件論の再構築を、法学的側面と経済学的側面の両面から総合的に考察するものである。本年度は、研究の前提として、我が国の従来の裁判例・学説の再検討と体系的整理に着手するとともに、消尽法理の理論的根拠について再検討を行うための準備作業に入った。知的財産権者保護の要請と市場における知的財産の円滑な流通確保の要請とが衝突してい局面で、この両者を適切に衡量するための枠組みを構築する理論的考察を進めた。この作業を行う際には、規範的な分析ともに、消尽法理が社会で実際にもたらし得る帰結、とりわけ、知的財産保有者の収益構造の変化を適切に把握し、それを視野に入れた機能的な分析が必要となる。そこで、本年度の後半期には、知的財産保有者の収益構造・収益獲得ルートに関する分析にも従事した。ここでは、知的財産保有者と知的財産の利用を欲する者との間での「契約」締結による利用許諾とその対価徴収が重要な要素となる。そこで、本研究課題から見れば派生的な研究とはなるが、知的財産の利用を内容とする実施契約に対する規制のあり方についても考察を広げ、民法理論との整合性に特に留意しつつ検討を進めた。本年度は、基本的・原理的な研究に軸足を置いたため、具体的な要件論など解釈論には踏み込めなかったが、今年度の基礎研究をもとに、次年度以降、具体的な成果に結びつけたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、知的財産保有者の収益構造、利得獲得手段に関する分析を行いつつ、消尽法理の理論的根拠を再検討するという当初の目的をおおよそ達成することができた。ただし、研究計画では、比較法研究のための海外調査を予定していたが、調整がつかず断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に行った基礎研究に経済分析を加えた総合的な研究に着手するとともに、理論的根拠との整合性を持った具体的な要件論の確立を図る。また、今年度断念せざるを得なかった海外調査も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き、本研究課題に関連する文献・資料の購入を進める。また、本研究目的を達成するためには、実務家との交流により実務的知見を獲得することが不可欠となる。そこで、学会や研究会等に積極的に参加し、研究成果の報告や意見交換を通じて、他の研究者の研究成果に触れるとともに実務的知見を獲得する。そのための旅費を支出する。さらに、前述の通り、今年度は海外調査を行うことができなかったこともあり、研究費に残額(次年度使用額)が生じた。次年度以降、これを外国旅費として支出する予定である。
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