2011 Fiscal Year Research-status Report
文化政策における知的財産法の役割:その意義と限界について
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23730119
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小島 立 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00323626)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 文化政策 / 文化多様性 / 知的財産法 / 電子出版 / 現代アート / 伝統工芸 / ファッション |
Research Abstract |
平成23年度は、国家による文化政策について、文化的表現の多様性を達成する上で重要と考えられる複数の政策手段(「文化政策のポートフォリオ」)を洗い出す作業に着手した。とりわけ重要と思われるのは、国家による文化芸術助成、民間のフィランソロピーに対する税制優遇措置及び著作権法である。また、文化政策の達成「手段」の抽出のみならず、達成「手法」についても検討を行った。国家が文化芸術助成を行う場合でも、補助金という金銭的支出が効果的な状況もあれば、何らかのコンペで優秀者を表彰するといったいわば「間接的な助成」を行い、文化芸術関係者をマーケットメカニズムに乗せる手助けをする支援の手法もありうる。またコンテンツのみならず、図書館や博物館といった「媒介的機能」を果たす組織の整備も文化政策の重要な柱である。 上述の観点に立脚し、平成23年度は、主に電子出版、現代アート、伝統工芸について検討した。電子出版では「プラットフォーム」という媒介者が登場しつつあり、紙媒体の書籍を前提とした伝統的なビジネスモデルが変容しつつある。加えて、電子出版では公共図書館の役割が注目を集めている。日本では国立国会図書館蔵書のデジタル化を開始したものの、それが潜在的な競争者になるのではないかという理由から、国立国会図書館の蔵書デジタル化に対して出版業界から危機感も表明されているため、電子出版の時代における公共図書館の役割についても検討を行った。現代アートについては、それが「アート」として受容される前提条件にまで遡った考察を行うとともに、知的財産法による支援では不十分な点がある可能性に鑑み、いわゆる「まちづくり」の観点から検討を行う重要性があるとの結論に至り、「アートプロジェクト」との関連についても研究を行った。その過程において、現代アートと伝統工芸の親近性にも注目し、福岡県内の伝統工芸の関係者への実態調査に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国家による文化政策について、文化的表現の多様性を達成する上で重要と考えられる複数の政策手段(「文化政策のポートフォリオ」)を洗い出す作業も順調に進捗しているとともに、具体的な参照領域の検討(電子出版、現代アート、伝統工芸など)も進んでいるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、国家による文化政策について、文化的表現の多様性を達成する上で重要と考えられる複数の政策手段(「文化政策のポートフォリオ」)の関係についての理論的考察を深めるとともに、具体的なクリエイティブ産業の研究を継続して行うこととする。従来取り上げてきた電子出版、現代アート、伝統工芸などに加え、新しくファッションを取りあげて検討する予定である。また、伝統工芸や伝統的知識の領域においては、その文化的表現の背後にあるコミュニティについて深く知ることが重要であると考えており、その検討及び理論的考察にも着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降の研究費については、今年度同様、国際会議や研究会等への出席や資料収集のための出張旅費、書籍購入費、および、必要な物品購入費に充当する予定である。
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