2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730122
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 著作権法 / 表現の自由 |
Research Abstract |
本研究は、デジタルネットワーク時代において著作権保護と表現の自由との調整という観点から望ましい著作権法の制度設計のあり方を検討することを目的とするものであるが、こうした検討を行うためには、まず現行著作権法の下で、著作権保護と表現の自由との調整問題がどのような形で顕在化しているかを分析検討することが不可欠となる。そこで、平成23年度においては、著作権保護と表現の自由との調整が問題となる各論的テーマのうち、翻案とパロディの問題を取り上げて具体的な検討を行った。現在の著作権法は、著作者のオリジナリティの保護を重視し、翻案及びパロディについて著作権の保護を及ぼしているが、翻案及びパロディは原著作物にないオリジナリティを発揮する新たな表現行為としての性格を有しており、これに著作権の保護を及ぼすことは後発者の表現の自由及び国民の知る権利を制約する側面を持つ。したがって、著作者のオリジナリティの保護の観点から翻案及びパロディに対し著作権の保護を及ぼすとしても、単純な海賊版の場合と異なり、表現の自由に十分に配慮した形でその保護のあり方を決定することが必要となる。こうした問題意識に立って、平成23年度は、従来の我が国の裁判例、学説の議論を検討し、ついで、この問題について議論の蓄積が豊富なドイツ法を参照するため、ドイツへの出張を行い、必要な資料収集及び意見交換を行った。その結果、ドイツでは我が国と比べて、翻案及びパロディに関してより表現の自由の保障に配慮した形で柔軟に著作権の保護内容が決定されていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、翻案、引用、間接侵害等、著作権法上の重要論点を具体的に検討する中で、著作権保護と表現の自由との調整という観点から、これら各問題を解決するための共通の指針や判断基準・手法を定立することを目的としている。翻案、引用等のテーマはいずれも著作権法上の難問とされ、判例・学説等における議論の蓄積も豊富であるため、単年度で研究を完成させることは困難である。そこで、本研究では、平成23年・24年度の両年度においてこうした各論的テーマの研究に取り組むこととしている。平成23年度は、そうした論点のうち、特に翻案とパロディに焦点を当てて検討を行った。具体的には、従来の判例・学説の整理、分析、及び比較法としてドイツ法の研究を行った。しかし、平成23年度は、アメリカ法の研究を十分に行うことができなかったため、平成24年度は、間接侵害、引用等、新たな各論的テーマの研究に取り組みつつ、翻案・パロディに関しアメリカ法の調査を行うこととしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、デジタルネットワーク時代において著作権保護と表現の自由との調整という観点から望ましい著作権法の制度設計のあり方を検討することを目的とするものであるが、そのための前提作業として、本研究では、まず、平成23年度・平成24年度の両年度において、翻案、引用、間接侵害等、著作権保護と表現の自由との調整が問題となる著作権法上の重要論点を具体的に検討することを計画している。平成23年度は、翻案、パロディの問題について取り組んだため、平成24年度は、残された各論的問題として、引用、間接侵害等の問題について取り組むこととしたい。また、平成23年度に十分に行えなかった翻案・パロディに関するアメリカ法の研究も引き続き行うこととしたい。そして、平成23年度、24年度の研究の総括として、著作権保護と表現の自由との調整という観点から、これら各論的問題を解決するための共通の指針や判断基準・判断手法を定立することを試みたい。その上で、平成25年度以降は、著作権法全体の制度設計の検討に軸足を移し、著作権法を憲法的観点から分析するドイツ法やアメリカ法の議論を参照しつつ、望ましい著作権法の制度論を構築したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上の研究計画を効率的に進めるために、本年度も、ドイツ法、アメリカ法の比較法研究を重視することとしたい。具体的には、LexisNexisやHein-online, Beck-onLine等の各種データベースを積極的に活用することとする。これらデータベースには最新の立法、判例、論文等が掲載されているため、本研究を円滑に遂行するために必要不可欠なものである。また、本年度の主な研究対象である引用、間接侵害等は、著作権法上の重要テーマであり、各種研究会やシンポジウム等でもしばしば取り上げられている。そこで、応募者は、これら内外の研究会及びシンポジウムへの参加を通して、情報収集及び意見交換を積極的に行うことにしたいと考えている。平成24年度も、平成23年度に引き続き、ドイツ、アメリカ等への海外出張を行い、彼の地における最新の議論状況を把握することに努めたい。
|
Research Products
(5 results)