2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730122
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
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Keywords | 著作権 / 表現の自由 / 間接侵害 / 私的複製 / ドイツ法 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、著作権保護と表現の自由との調整が問題となる著作権法上の諸問題についての研究を行った。本年度は、特に、間接侵害、私的複製の問題を中心に研究を進めた。 平成24年8月にはドイツにて間接侵害に関する調査及び資料収集を行い、その成果を論文にまとめて公表した(高林龍他編『現代知的財産法講座III知的財産法の国際的視座』参照)。同論文では、我が国の著作権法とドイツの著作権法とが侵害訴訟における被告適格について同様の規定を有するにもかかわらず、全く異なる理解を示していることを明らかにした上で、ドイツ著作権法の間接侵害の規律のあり方を参考にして、現在の我が国の判例・学説の問題点や課題を指摘し、間接侵害者に対しても差止請求を認めるべきことを主張しつつ、著作権者の実効的な救済と間接侵害者の予測可能性の確保とのバランスを実現するために、差止請求の相手方となるべき間接侵害者の範囲をいかに画するべきかについて、具体的な検討を行った。 また、私的複製に関する研究については、その研究成果を踏まえ、平成25年4月の著作権法学会において私的複製に関するシンポジウムを開催し、司会を務めた。同シンポジウムでは、私的複製の権利制限の範囲が立法及び判例上徐々に縮減される傾向にある現状を指摘し、そのような傾向は私的複製をあくまで著作権者に不利益を及ぼさない範囲で権利制限を認めるという立法当時の考え方に由来するものであるが、著作権保護と表現の自由等の対抗利益との調整という観点からみた場合には問題があるということを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、平成23年度に引き続き著作権保護と表現の自由との調整が問題となる著作権法上の諸問題についての研究を行うと共に、憲法学における表現の自由に関する研究も行う予定であった。 著作権法上の諸問題についての研究では、間接侵害と私的複製について研究を行うこととしたが、間接侵害については比較法の対象とするドイツ法の研究に多大な時間を費やすこととなったほか、私的複製については、平成25年4月の著作権法学会のシンポジウムを開催することが急遽決定し、その準備に時間を費やすこととなったため、憲法学における表現の自由の研究に十分な時間をかけることができなかった。 とはいえ、間接侵害等に関する研究を遂行する中で、必要に応じて、憲法学における表現の自由に関する研究を進め、その知見を踏まえて間接侵害等の研究を行ったため、結果として、表現の自由の観点から著作権制度のあり方を再検討するという本研究の目的に即した研究活動を行うことができたと考える。この点を勘案して、「おおむね順調に推移している」との自己評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も昨年度に引き続き、著作権法の各論的テーマの検討を行うこととする。具体的には、著作物性の問題を扱いたい。また、本年度は、このような各論的な検討に加えて、著作権法と表現の自由との総論的な研究に重点を置くこととする。 上記研究を行うに当たっては、本研究の特色の一つである比較法的研究を重視する。比較法研究を行うに当たっては、データベースを積極的に活用し、ドイツ法、アメリカ法の文献の精読を集中的に行うとともに、ドイツ、アメリカへの海外調査を実施し、それぞれの国において著作権法と表現の自由との関係についてどのような議論がなされているかを調査研究することとしたい。また、昨年度同様、内外の研究会、シンポジウム等にも積極的に参加し、本研究のテーマに関する情報収集及び意見交換を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、ドイツ、アメリカでの調査研究を実施する予定であるため、海外調査のための旅費が必要となる。また、国内の研究会、シンポジウム等に参加するため、国内旅費及び研究会等参加費が必要となる。さらに、国内外の文献・資料を購入するための費用が必要となる。
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Research Products
(4 results)