2011 Fiscal Year Research-status Report
外国人女性に対するドメスティック・バイオレンス―法的保護政策の展開―
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23730127
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
福嶋 由里子 (財)世界人権問題研究センター, その他部局等, 研究員 (20530166)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジェンダー / 外国人女性 / 暴力 |
Research Abstract |
本研究は、外国人DV被害者の救済にむけた諸外国の先駆的な法政策の特徴や有効性を分析し、日本における改善策を具体的に提言することを目的とするものである。この目的を達成するため、主に以下の3点に焦点をあて、国内外での調査研究を実施することとしている。(1)外国人DV被害者に対する特別な在留資格制度の利用状況と、在留資格の申請から取得に至るまでの過程において被害者が抱える問題、(2)DV被害者に対する特別な制度を通じて在留資格を取得した者とそれ以外の者の生活状況等の違い、(3)日本における外国人被害者の実態や、在留資格の有無による支援内容・生活への影響等。 本年度は、まず、国内における外国人DV被害者の現状を把握するため、文献や統計データの収集、被害者支援団体や専門家等が実施するシンポジウム等への出席、被害者支援団体関係者に対する聞き取り調査等を行った。これらの調査を通して、来年度の調査すべき事項を明確するための有用な情報を得ることができた。 海外における調査としては、当初は米国における現地調査を予定していたが、現地の被害者支援団体等との訪問調査日程調整が難航したため、現地調査は来年度に実施することとした。その他、海外の状況に関する調査としては、もう一つの調査候補地であるカナダについて、主に文献収集を行い、来年度の調査にむけて準備をすすめた。 本年度実施した調査研究の成果は、学術研究者等で構成される所属研究会(世界人権問題研究センター研究第4部、複合差別研究会等)で発表した。また、カナダにおける現地調査の予備調査等の成果は、「研究紀要」(第17号、公益財団法人世界人権問題研究センター)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に得た情報等をもとに、さらに国内外で調査研究を進める。まず、国内では、ひきつづき外国人DV被害者の現状を把握するため、文献や統計データの収集、支援団体やその他関連機関への聞き取り調査、研究者からの意見聴取を行う。調査対象者の選定や連絡を円滑にすすめることができない場合は、すでに協力関係にある現地の民間支援団体や、従前より学術交流のある法学者、または被害者支援活動を通じて協力関係にある弁護士等の専門家に相談し適宜助言をもらう。 国外については、米国およびカナダに赴き、政府および支援団体が公表している統計データの収集や、現地の行政機関、民間支援団体、研究者・弁護士等に専門家に対して聞取り調査を実施する。聞き取り調査では、主に、外国人DV被害者を対象とした特別制度により在留資格を取得したもの、取得できなかったもの、申請を断念したもの等、被害者の在留資格の状況の違いに着目し、加害者との関係性の変化、離婚裁判等の家事紛争における問題点、加害者と離別し自立生活を始めた被害者の就労、育児、健康等、生活状況の違い等に焦点をあて、現状の把握に努める。 これらの調査で得た情報については、前年度と同様、所属している研究会等や紀要等において発表することとする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にむけて、平成23年、平成24年度に得られた情報をもとに、研究成果をまとめる。状況の分析方法や、日本に対する政策提言を検討する際には、これまで学術交流のある法学者や所属研究会の研究員等に相談し、助言をもらう。研究成果は、所属学会(日本女性学会、ジェンダー法学会、比較法学会等)、国内外の専門家会議、人権NGOの講演会等で発表する。また、研究成果を論文にまとめ、所属学会誌等に投稿する。さらに、日本政府に対する勧告書等を日英で作成し、国内外のNGOネットワーク等と連携し、日本における外国人被害者救済の充実にむけて働く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に、米国およびカナダでの現地調査(渡航費、宿泊費、文献購入、謝金等)にかかる費用として、当該研究費を使用することとする。また、国内の調査については、前年度に行くことができなかった遠方の支援団体等への聞取りを実現させるために、研究費を使用することを予定している。その他、学会や専門家会議等の出席や、関連文献の購入等のため、研究費を活用することとする。
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Research Products
(1 results)