2011 Fiscal Year Research-status Report
転換期における政党の政策革新能力・戦略的柔軟性と政党組織の関係についての比較研究
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23730130
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 康史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00323238)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 政党組織 / 社会民主主義 / 政党 / イギリス労働党 / 日本社会党 |
Research Abstract |
本年度においては、(1)新制度論の観点から、政党組織を政党の行動・戦略を制約・促進する要因として位置づけ、制度と党内アクターとの関係を理論化する作業を行うとともに、(2)主にイギリス労働党、ドイツ社会民主党、日本社会党の政党組織を比較する中で、日本社会党の組織を、フォーマル・インフォーマルの両面で、労働党と社会民主党のそれぞれの特徴を両方とも有する、「二重性」のある組織として位置づけた。そのうえで、(3)主に日本社会党の政党組織における「二重性」の形成過程を、戦後から1960年代に至る時期に焦点を絞り、国会議員・労働組合(総評)・活動家という党内アクター間での、優越連合形成をめぐる党内ゲームの観点から分析した。その結果、日本社会党においてどのような動態を経て、一方では総評の、他方では地方支部・活動家の発言権が保証され、指導部の戦略的自立性が「二重」に制約される政党組織が形成されたのかについて解明した。以上の成果については、「日本社会党の政党組織形成に関する制度論的分析」として、『国際公共政策論集』第29号に発表した。 この研究の意義・重要性は、これまで中心的対象としてはほとんど焦点を当てられてこなかった、日本社会党の政策形成組織の性格について比較の観点から解明するとともに、その制度形成にかかわる動態について、新制度論の理論的枠組みを利用しながら解明した点にある。それとともに、日本社会党における戦略的柔軟性を、イギリス労働党やドイツ社会民主党との比較の中から、主に路線転換の成否に焦点を当てながら分析するための、準備作業としての意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1980~90年代の社会民主主義政党、特にイギリス労働党を中心とし、日本社会党やドイツ社会民主党を比較の対象として事例に取りながら、(1)政党の政策革新能力・戦略的柔軟性と政党組織との関連性、及び(2)その能力や柔軟性を高める組織への改革が可能となった要因について、比較事例分析を通じて解明することを目的としている。 このうち、(1)の論点について、イギリス労働党に関しては、ほぼ解明を終えた段階にあり、また日本社会党の比較の観点からも分析が進みつつあって、研究成果としてその一部を既に発表している。また、(2)の観点に関しては、イギリス労働党についてはほぼ検討を終えた状態にあり、日本社会党に関しても、その準備作業・予備的分析を終えた段階にあり、やはりその成果の一部を発表している。また、今後の比較研究の土台・基礎となる理論枠組み構築も、主に政党組織論・新制度論の観点から進みつつあり、イギリス労働党や日本社会党に関しては実際にその枠組みを利用して分析することで、その応用可能性を確認しつつある。 したがって、論点別にみた場合の進捗状況も、三政党に関する比較分析の進行状況も、さらに、理論枠組みの構築の観点からも、当初の研究の目的に照らして、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、イギリス労働党についての検討をいったん終えて、次なる課題として日本社会党についての準備的検討・予備的分析を進めつつある状況にある。今後の研究の推進方策としては、(1)この方向を継続して進め、日本社会党の路線転換の成否と政党組織との関連を分析するとともに、その政党組織改革の動態について分析を行い、(2)その分析結果にしたがって、イギリス労働党との比較の観点から、政党の政策革新能力・戦略的柔軟性と政党組織との関連性、及びその能力や柔軟性を高める組織への改革が可能となった要因を検討する作業に進む。そのプロセスにおいて、イギリス労働党と日本社会党に関して更なる資料収集と調査を行う予定であり、また特に日本社会党分析に関しては、筑波大学国際日本研究センターに所属する日本政治研究者の協力を仰ぎながら研究を進めていく。 三番目の事例・比較対象となるドイツ社会民主党についての分析および、イギリス労働党・日本社会党との比較に関しては、主にその後の課題となるが、(1)(2)の作業に並行して、ドイツ社会民主党についての資料収集も進めるとともに、収集された資料をもとに予備的分析を進め、今後の三政党比較分析へと向けて、基礎的な構図を形成する。 また現在、比較研究のための理論枠組みについても構築が進んでいるが、今後、1970年代以降の日本社会党や、ドイツ社会民主党へと研究対象を広げていく中で、修正を迫られる可能性もあり、引き続き比較政治理論の状況を幅広く検討しつつ、理論的な検討を進めていく。特に今後は、比較政治の理論の中でも、政党に関わる理論に重点を置いて、収集・検討を展開することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度においては、イギリス労働党・日本社会党・ドイツ社会民主党分析のうち、主に日本社会党分析を中心に進めたこともあり、日本国内の機関における資料収集・調査を先行させて集中的に行うこととなった。その結果、イギリス労働党やドイツ社会民主党に関する資料収集・調査のための旅費を中心として、24年度に使用する予定の研究費が生じることとなった。24年度においては、新たに請求する研究費を合わせ、イギリス労働党・日本社会党に関して、分析の進捗によって新たに必要となった資料を中心として、補完的な資料収集を行うとともに、ドイツ社会民主党についての資料収集へと展開する。これらの資料収集のために、文献など様々な研究資料の収集を行うとともに、国内・国外の機関に赴いての調査も必要となる。また、これらの収集された資料に関し、大学院生を雇用するとともに、コンピューターや様々な周辺機器を活用して、それらの資料の整理およびデータベース化を行う。 また、イギリス労働党分析および英日比較の部分について、主に国内の学会・研究会に赴き、中間報告的な研究発表を行うとともに、関連テーマに関する情報収集を行う。 また、比較研究のための更なる理論構築へと展開するために、比較政治理論・政党理論を中心とした政治学関連文献の収集を進め検討を続けるが、24年度においては特に政党理論の収集に力を入れる。
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