2012 Fiscal Year Annual Research Report
リベラルな多文化主義によるリベラルではない文化への介入の研究
Project/Area Number |
23730132
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 涼子 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師 (20409717)
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Keywords | カナダ / 多文化主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、リベラルな多文化主義社会における、リベラルではないとされる文化への介入の考察を行うことである。とりわけカナダにおけるイスラム教徒の女性をめぐる論争と取り組みを題材に、自由の実現という観点から見て、直接的介入と間接的介入のいずれの方策がより有効であるのかを検討した。 最終年度である平成24年度は、(1)平成23年度に引き続いてリベラルではないとされる文化に対する直接的・間接的介入についての文献研究、(2)平成23年度に行った文献研究を踏まえた現地調査の実施、(3)国際学会での報告準備を行った。 現地調査については、オンタリオ州における裁判外紛争処理の事例に加えて、ケベック州において文化的差異に対する配慮の問題を検討した専門委員会の取り組みを検討するため、研究セミナーやカンファレンスに参加して資料・情報収集を行うとともに現地研究者や専門家との意見交換等を行った。 本年度の研究成果の一部として、論文「多文化主義とネイション」が出版された。また、当初はPacific Asia Network of Canadian Studies(中国・北京)にて学会報告の予定であったが、カナダ政府による予算廃止の影響で学会の開催が取りやめとなったため、別の国際学会での報告を検討している。 本研究を通じて、リベラルな価値を強要する強制的介入が、救おうとしている女性たちをむしろ排除してしまう契機を持つことにこの方策の問題点を見いだした。そして、カナダにおける実践の考察から、公的対話へ参加するための回路をリベラルではないとされる文化に属する女性にも開くような間接的介入に、より包摂的な多文化主義の可能性があることを示した。
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