2012 Fiscal Year Research-status Report
移民外国人問題の争点化と「国家・民族関係」の影響に関する国制史的研究
Project/Area Number |
23730140
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
梶原 克彦 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (10378515)
|
Keywords | 少数民族問題 / 移民問題 |
Research Abstract |
本研究では、移民・外国人問題の争点化に際して、移民や外国人の文化的異質性そのものよりも、受け入れ側であるホスト社会の民族構成や自国イメージを重視する。そのため考察対象である19世紀末から現代までのオーストリアを、まず国家形態ごとに、多民族国家・国民国家・超国家組織に分類し、「国家と民族の関係」を異にしている三つの異なる国家形態がいかなる自国イメージを作り上げ、そのことが文化的に異質な集団への対応や移民政策に与えた影響の相違を検討している。 本年度に進めた内容は主に以下の三点となる。第一に国内で入手可能な文献の読み込みによる基礎研究である。主として現代ヨーロッパにおける少数民族と移民問題の事例と対策に関する実例の検討ならびに移民・少数民族問題への理論的アプローチの整理、大戦間期における国家イメージの研究を行った。 第二に少数民族問題に関する資料の収集をオーストリア国立図書館ならびにウィーン大学図書館において行った(実施期間は平成25年2月27日から3月21日)。時間と経費の節約のため、春季の休講時期を活用した。資料は、のちの理論化を視野に入れて、1. 国家形態、2. 文化的属性とその経済的意味合い、に従って4つのカテゴリーを設けて(多民族国家期〔19世紀末から20世紀初頭〕、国民国家期:福祉国家形成以前〔大戦間期〕、国民国家期:福祉国家形成期〔第2次大戦後〕、超国家組織と国民国家の併存期〔現代〕)体系的に収集した。 第三に比較・共同研究への展開に向けて、研究打ち合わせをおこない、本研究に対する新たな視座を得ると共に、今後の新たな展開について示唆を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で示した5つの区分について、おのおの研究および作業を進めることができた。基礎分析については、本年度も少数民族問題を中心に、新聞記事の収集・整理および文献の渉猟・読解をおこなった。この作業は前年度から引き続きおこなっているもので、現代および過去の事例を照合し、その特徴を浮き彫りにした。また大戦間期における国家イメージの研究は従来の研究を引き継ぐものであるが、新たに正統主義者たちのそれに関する分析を進めることになった。 つぎに国内での資料収集を上記の基礎的分析のためにおこなった。分析に必要な文献は、すでに所有し利用可能なものはこれを利用して進め、その他の文献は、国内の図書館からの借用、複写依頼によって入手した。 海外での資料収集は平成25年2月27日から3月21日までオーストリア国立図書館ならびにウィーン大学図書館においておこなった。時間と経費を節約するために、春季の休講時期を選択した。限られた時間で調査を行う必要があったため、事前に所蔵内容をチェックしていたおかげで、効率よく収集を行うことができた。 他の研究者との意見交換については、研究代表者が主宰した研究会や学会・研究会出席の際にこれをおこなった。まず前年度に引きつづき、サントリー文化財団の助成による「国際秩序変動期の『併合経験』に関する比較研究」研究会における打ち合わせによって、本研究にも活用可能な文化・言語政策などのテーマについて意見交換をおこなった。また所属機関のスタッフと文化外交に関する研究プロジェクトについて意見交換を行い、本研究の新たな展開について示唆を得た。 最後に成果発表については、上記の資料調査や基礎研究で得られた知見の一部を盛り込む形で、大戦間期カトリック派の国家イメージに関する従来の研究を一書に編む作業をおこなった(平成25年4月に上旬に出版済み)。
|
Strategy for Future Research Activity |
基礎的分析については、まず前年度に海外で収集した少数民族問題に関する資料の分析と整理をおこなう。またこれと並行して、外国人労働者・移民労働者の事例と対策に関する事例の検討、移民政策への理論的アプローチについて、先行研究の読み込みを行う。この分析に必要な文献は、国内で入手できるものを中心に利用する。 国内での資料収集は上記の基礎的分析に必要なものについておこなう。外部貸出不可などの場合には所蔵館に直接赴かねばならないが、その場合は時間と経費節約のため、長期休暇や休講時期にこれをおこなうこととする。 海外での資料収集は、オーストリアおよびドイツでおこなう予定である。限られた時間を有効に活用するために、事前に所蔵状態をチェックしておく。 上記の作業から得られた知見を比較し、研究の成果と進捗状況を確認するため、研究会もしくは研究打ち合わせをおこなう予定である。開催の頻度は年に一~二回とし、別の研究会との共催などによって、煩雑さを避け、効率化を図ることとする。 前年度に得られた知見や分析結果の公表については、まず研究会での報告をおこなう(決定済み)。また研究成果をまとめた学術論文を紀要や学会誌に投稿し、公刊する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は移民問題・少数民族問題関連書籍の購入のために計上している。本研究は実証性を重視するために多くの資料を活用するという特徴をもっており、そのために海外での資料収集が欠かせない。さらに現代の問題を取り扱っており、とりわけ2013年はオーストリア下院選挙があることからに鑑みても、資料収集の短い期間でも現地の空気を肌で感じる必要がある。これらの理由から、平成25年度も調査・研究旅費に配慮して経費を算出している。実施期間は旅費に無駄が生じる事の無いように、休講期間を予定している。また、平成25年度には研究成果の公表に配慮して、成果公表旅費を計上している。その他として、資料収集時の複写費を、複写物、移民問題・少数民族問題関連書籍の運搬のために通信・運搬費を、収集した資料の整理のために補助者を雇用するために謝金等、を計上している。
|
Research Products
(2 results)