2012 Fiscal Year Annual Research Report
基礎自治体における係争的施策領域への無作為抽出型市民参加手法の適用に関する研究
Project/Area Number |
23730145
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長野 基 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50367140)
|
Keywords | 市民参加 / 参加型政策分析 / 市民陪審 / 審議会 / 市民討議会 / 計画細胞 / 事業仕分け / 熟議民主主義 |
Research Abstract |
本研究は、無作為抽出型市民参加の特徴と運用上の留意点、そして、自治体政策決定・運用過程全体に与える影響を係争的課題の政策判断への活用という視点に立って考察するものである。平成23年度は前年度からの事例分析に加え、いわゆる「事業仕分け」への市民参加に関する自治体アンケートを実施し、無作為抽出型参加の活用状況等を調査した。 研究期間全体の調査分析から、東京都新宿区「第2次実行計画のための区民討議会」や埼玉県和光市「大規模事業検証会議」に象徴されるように、無作為抽出型市民参加は、決算ベースでの事中・事後段階への「仕分け」だけではなく、事前評価、つまり政策形成手続きの「川上」に位置する「政策のアセスメント」へも応用されようとしていることが明らかになった。 また、無作為抽出型参加を活用した「仕分け」の取り組みでは、「模擬仕分け」等の事前研修による市民へのキャパシティ・ビルディングの機会の整備が進みつつあること、自治体行政側には、予算カットの機会としてだけではなく、行政職員の政策プレゼンテーション能力等、様々な組織能力向上も重要な成果と認識されていることが明らかになった。ただし、「仕分け」の取り組みは、首長のイニシアティブを最大の要因としており、そこでは自治体官僚機構を「敵」として、それを叩く「政治的ショー」として演出されているリスクも確認された。 以上から、無作為抽出型市民参加は、自治体政策決定・運用過程にとって、政策形成過程へ市民参加の機会を拡充させると共に、行政組織・職員の能力醸成という「広義の行政改革」のための重要な手段と評価され得る一方、政治(家)側からの支持獲得・動員の手段としての側面も持つため、これらの功罪を自覚しつつ、利用することが必要であることが明らかになった。自治体ガバナンス全体としての戦略に基づく整合的「配置」・活用が必要といえよう。
|
Research Products
(4 results)