2011 Fiscal Year Research-status Report
政権交代と政官関係の変容―政策形成過程をめぐる比較歴史研究
Project/Area Number |
23730146
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清水 唯一朗 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (70361673)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 政治学 / 日本史 / 政官関係 / 政策形成過程 / 官僚制 / オーラル・ヒストリー |
Research Abstract |
政権交代に伴う政官関係と政策形成過程の変化を歴史的な比較軸に立って明らかにしようとする本研究のうち、初年度は、これまでの研究蓄積を生かしつつ、藩閥政権から初の政党内閣、さらに山県、伊藤内閣を経て桂園時代に至るまでの20年を第一期と捉えて研究を進めた。まず2011年4月、政官関係の歴史的展開から政党ガバナンスが構築されていく過程を長期的かつ俯瞰的にまとめた「政治主導と官僚主導」(『レヴァイアサン』48号)を発表した。制度研究者を主な読者とする同誌に発表したことで、これまでとは異なる反応を得ることができたのは、比較制度分析を行う本研究にとって有益であった。ついで5月には日本選挙学会にて「政界再編と政権交代」と題し、政党中央におけるガバナンスの形成と構造の再構成を論じた。このセッションにも多くの現代政治研究者に来場して頂き示唆を得た。夏以降は、European Association of Japanese Studiesにおいて、"From Conflict to Compromise: The Changing Relations of Party Politics and Ministerial Bureaucracy in Interwar Japan"と題して比較制度分析の手法を用いて当該期を論じた。欧州の日本研究者が集まる同会での報告により、イギリス、ドイツ、イタリアとの同時代的比較の観点を得ることができた。政権交代後の政策形成過程に関するヒヤリング、資料調査も進め、その成果として夏に「危機與改革中的日本政治」と題する論文を『國際關係研究月刊』(香港)に寄稿、秋に台湾政治大学における日本研究研討会にて「岐路をゆく日本政治」と題して、冬の日台フォーラムで「政権交代後の日本政治」と題して発表した。同フォーラムには中国、韓国、アメリカの研究者も出席しており多くの示唆を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、これまでの研究蓄積を生かしつつ、藩閥政権から初の政党内閣、さらに山県、伊藤内閣を経て桂園時代に至るまでの20年を第一期と捉えて研究を進めること、政権交代後における政官関係の変化について、ヒヤリングと文書資料の収集を進めることを設定した。前者については、比較歴史制度分析の観点から研究をすすめ、その結果、上記のとおり1本の学術論文を公表し、2回の学会報告(国内1回、国際1回)を行うことができた。おおむね順調に進んでいると考えている。資料収集についても、東京近郊の資料館をはじめ、栃木、千葉、埼玉、神奈川の資料館、個人宅において貴重な資料を得ることができ、次年度への準備も進んでいる。後者については比較制度分析の観点から研究をすすめ、その結果、上記のとおり1本の論文を国際学術誌に公表し、2回の国際学会報告を行うことができた。おおむね順調に進んでいると考えている。資料収集についても、政権関係者、現役官僚、官僚OBへのヒヤリング、文書資料の公開請求による資料収集を順調に行うことができており、次年度への準備も進んでいる。以上の状況から、現在、本研究は順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は政権交代に伴う政官関係と政策形成過程の変化を歴史的な比較軸に立って明らかにしようしている。とりわけ、これまで制度改正と意識変化から説明されてきた変化を、ブラックボックスとして扱われてきた政策形成過程の変化まで深めることにより、戦前日本における政権交代の経験知を用いて現代日本の政権交代との比較歴史制度分析を行い、戦前日本の政権交代をより実体的に捉えると共に、現代日本の政権交代に伴う諸問題に対する本質的な理解を得ることを目的としている。前項に記載したとおり、研究は計画にそって順調に進展している。よって、当初の計画と上記の目的にそって、第2年度は第1年度の研究内容を論文として公刊する作業を進めつつ、大正政変後、政党内閣期の嚆矢となる加藤高明内閣までの官僚内閣と政党内閣が交代する15年を第二期と捉え、官僚内閣から政党内閣に政権が交代した場合の構造変化と政策変化を追いかけ、最終年度は歴史比較分析を軸に据えた研究に重点を置いて研究を進めていきたいと考えている。本研究の延長線上に考えていた、比較制度分析についても、すでに第1年度でその萌芽的な研究に着手することができた。この点についても、第2年度、最終年度の研究のなかでさらに取り組んでいきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第2年度においては、当初の予定通り、前年度の研究内容を論文として公刊する作業を進めながら、大正政変後、政党内閣期の嚆矢となる加藤高明内閣までの官僚内閣と政党内閣が交代する15年を第二期と捉え、官僚内閣から政党内閣に政権が交代した場合の構造変化と政策変化を追いかけていく。とりわけ、従来おざなりにされてきた、政党内閣における政策形成過程を明らかにすることに重点を置く。現在の研究状況ではここがブラックボックスとなっており、そのため、現代との歴史比較分析がイメージでしか進めることができない。これを打開することは本研究の意義を高めるために必要不可欠である。このため、当該期の政策文書を多数有する福岡、熊本、高知に出張して資料収集を行う。現代日本の政官関係についてのヒヤリング、資料収集も前年度から継続して進める。最終年度の比較研究を念頭においてまとめていく。くわえて、第1年度において進展した比較制度分析(イギリス、ドイツ、イタリア、台湾)を深掘りし、韓国も対象に含めつつ、研究を進めていく予定である。
|
Research Products
(6 results)