2012 Fiscal Year Research-status Report
旧ソ連諸国における憲法動態と支配政党体制の比較研究
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23730149
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
大串 敦 大阪経済法科大学, 法学部, 准教授 (20431348)
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Keywords | 支配政党 / 憲法動態 / ロシア / ウクライナ / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
フィールド調査は、アスタナ(カザフスタン)で行ったほか、国内出張を行った。アスタナでは、カザフスタンの支配政党ヌルオタンの幹部、職員へのインタビューを行った。 研究成果としては、1.統一ロシア党と地方知事の関係を考察した中国語論文、2.統一ロシアと中国共産党、インド国民会議派を比較した日本語論文、3.ロシアとウクライナの支配政党形成とその失敗を比較分析した国際シンポジウム報告の三つとなる。 まず、研究成果1は2011年度の日本比較政治学会での報告を基にした論文で、ロシアの支配政党、統一ロシア党を通した中央集権化策によって、多くの地方知事が更迭された結果、党自体の動員力を低下させたことを指摘したものである。中国華東師範大学のロシア研究誌に掲載された。研究成果2は、ロシアの支配政党体制を中国、インドのものと比較したもので、支配政党体制の類型化を行うことで、支配政党体制論への理論的貢献を行った。研究成果3は、コンテキストを共有しているロシアとウクライナの政党政治が対称的な展開を示しているのはなぜかという点を、地方知事政策と関連させて分析したものである。ロシアが支配政党形成に向かったのに対し、ウクライナでは一貫して成功していない。こうした対称性を生んだ一つの理由は、地方知事が比較的自立的な連邦制のロシアと地方知事更迭が容易な単一国家制のウクライナの相違にあると指摘したものである。この研究成果3は、支配政党のみならず、国家制度まで視野に入れている点で本研究課題の一つの大きな達成と考えている。 なお、研究成果2は英語での公表も検討しているほか、3も2013年度中に公刊したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題に関し、2012年度には二本の論文が公刊され、国際シンポジウムでの報告を行った。研究成果の発信という点では進展がみられる。他方、2011年度に予定していたカザフスタンへのフィールド調査を2012年度に行ったが、その知見を取りまとめた研究報告はまだ行っていない。さらに、コーカサス諸国など他の旧ソ連諸国へのフィールド調査も、諸般の事情により2012年度中に行うことができなかった。この点で、当初の研究計画から多少の遅れが生じていることは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の公表の点では、2012年度に国際シンポジウムで行った報告を日本語と英語で公刊することと、カザフスタンのフィールド調査を踏まえた成果を発表することが直近の課題となる。 所属機関の変更により、これまで調査研究の遅れとなっていた事情が大幅に改善されるため、コーカサス諸国でのフィールド調査とロシアでのフィールド調査を2013年度に執り行う。また、その成果に関しても、学会および査読氏への投稿を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
図書等の研究資材の購入のほか、2012年度に行えなかったコーカサス諸国へのフィールド調査と、ロシアへのフィールド調査を行いたいと考えている。そのための現地研究者のとのネットワークづくりなどは行っている。 そこで得た知見の公表・深化のために学会に参加する。そのために数度の国内出張を予定している。海外での学会報告は年度の終わりごろに研究全体を取りまとまる形で行いたいと考えている。
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