2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730151
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
近藤 正基 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80511998)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 保守主義型福祉国家 / 家族主義型福祉国家 / ドイツ政治 / 日本政治 / キリスト教民主・社会同盟 / 自由民主党 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦後の日本とドイツの福祉国家がどのように異なっており、その相違がなぜ産まれたのかを明らかにすることであった。平成23年度は、以下の二点について論考を発表してきた。第一に、ドイツ福祉国家の政治メカニズムについての研究である。これまでより歴史をさかのぼって、コール政権に関する論考を執筆した。第二に、日本における福祉国家の政治メカニズムを明らかにすることである。とりわけ、農業団体が公的年金の発展に及ぼした影響について分析し、「農業団体と日本型福祉国家」という共著論文として発表している。このほかに、コールと中曽根政権による福祉国家政策の比較研究も進めてきた。ここで、そこで得られた知見を記しておきたい。両者のイデオロギー、リーダーシップ、対抗勢力との関係に焦点を当てながら、1980年代、中曽根がコールより自由主義的改革を押し進めたことができたのはなぜか。三つの要因を指摘できる。第一に、イデオロギーの相違である。コールは、社会支出の伸びに「早急に歯止めをかけなければならない」と述べていたが、同時に、社会保険原理の徹底を強く支持しており、必ずしも福祉縮減を目標としていなかった。その一方で、中曽根は、第二臨調答申に見られるような福祉縮減を志向していた。第二に、内政におけるリーダーシップが異なっていたことである。コールと中曽根は、ともに外交政策を主導したことはよく知られているが、中曽根が内政の改革にも意欲を見せたのに対して、コールは内政問題についてはショイブレ院内総務などに委任した。第三に、対抗勢力、とりわけ労組の影響力がどの程度あったのかが重要である。コールは、連邦予算随伴法を可決したことによって労組の反対に直面し、1984年には金属産業を中心とする大規模なストライキが巻き起こった。これに対して、中曽根政権下での総評は大規模な組織行動をおこさなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本及びドイツの福祉国家に関して、それぞれ論考を発表している。コール政権の福祉国家政策についての論考、ドイツ労使関係の変化関する論考、日本において農業団体が分立的年金にあたえた影響に関する論考を執筆してきた。がまた、論文としては発表することはできなかったが、二国間比較の研究も順調に進んでいる。とりわけ、コールと中曽根政権下での福祉国家政策を比較し、両国の相違がどのように産まれたのかについて分析している。このように、平成23年度は研究の目標にむかって、おおむね順調に進んだといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の夏には、ドイツで資料調査を行う。また、随時、国会図書館でも資料を収集する。そうして、現在、執筆を進めている中曽根・コールの比較研究を仕上げることはもちろんのこと、ブラント・田中の比較研究とシュレーダー・小泉の比較研究もあわせて進めていき、論文として発表できるかたちに仕上げていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料調査のため、相当額の旅費を計上している。ドイツへの調査旅費と東京への旅費が必要である。そのため、40万円を見積もっている。また、書籍もまだ足りないために、購入する必要がある。これに、15万円計上している。人件費やそのほかの経費も計上しているが、これは、大量のコピーをするためにアルバイトを雇うためのものであり、また、老朽化したPC関連機器をそろえるために利用する予定である。
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