2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域機構の国際規範ローカリゼーションに関する比較分析―反人身売買規範を事例として
Project/Area Number |
23730156
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 文子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), COEフェロー (80555243)
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Keywords | 国際情報交流 / 地域機構 / NGO / ネットワーク / 規範 |
Research Abstract |
本研究はEUやASEANといった地域機構が、グローバル規範を地域に普及・内面化するプロセスの中でどのような役割を果たすのかを明らかにするものであり、とくに深刻なグローバル人権問題の一つである人身売買を事例として取り上げ議論するものである。 研究計画で示したように、国際政治学の文脈から、EUにおける地域ガヴァナンスを説明し得る理論モデルを研究し、それに人身売買の事例を当てはめて議論した。さらに、ASEANにおける地域ガヴァナンスの現状について先行研究をまとめながら、ASEANにおける人身売買対策の限界について議論を展開した。その後、人身売買への取組みについて、EU地域およびASEAN加盟国のタイへのインタビューを敢行した。EUの取組みが問題はあるものの比較的成功している一方で、深刻な人身売買の事例を多く抱えるタイでは、国連機関が大メコン川流域に設置したプロジェクトにおいて、現地NGOとのネットワーク構築がうまくいっておらず、国際組織によって構築されるネットワークが必ずしも現地のニーズやネットワーク形成を促進するとは限らないということ、すなわち、国際組織と現地NGOによる重層的なネットワーク構築における歪みについても指摘することができた。これら研究成果の一部は、国際アジア共同体学会・ブローバルガバナンス学会・政治社会学会等共催のジョイント・コンファレンスにおいて発表し、高い評価を得た。また『Globalization, Development, and Security in Asia』において、東アジアにおける人身売買と地域ガヴァナンス形成に関する論文の掲載が決定しており、以上の研究成果を発表している。 今後はさらに反人身売買対策の展開を説明し得るネットワーク分析を行い、とくにASEAN地域における人身売買対策についてさらに分析を重ねていく予定である。
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