2012 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルイシューに対応する国際機関の相互協力を確保する上での課題に関する研究
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23730161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 真紀子 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 特任研究員 (40422274)
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Keywords | 食品安全 / 制度設計ガバナンス / 政治と科学 / 国際機関間相互協力・連携 / レジーム間相互関係 / コーデックス / WTO SPS協定 |
Research Abstract |
食品・衛生分野は多領域の問題(食品安全、貿易・経済政策、農業政策等)が交錯する場であり、関連する国際機関(コーデックス、FAO、WHO、WTO、OIE等)間での相互作用・連携・協力が求められる。本研究は国際機関間のインターフェースにある問題に着目し、国際機関間の利害関係、制度(意思決定、科学の位置づけ、文化等)の違いがいかに相互作用や連携に作用するのかについて、文献調査と海外現地調査をもとに実証的に検証した。 上記関連国際機関間では、相互理解を高めるために、これまで様々な仕組みが構築されてきている(例えばコーデックス会議に上記国際機関が出席し各々関連報告を行う等)。しかし更なる連携を深めようとすると、個々の国際機関の有する意思決定の仕組みや、透明性、参加メンバーの違いといった、歴史的に構築されてきた要素の違いが課題となり(例えばコーデックスとOIEの協力に関するガイダンスの策定過程ではこうした論点が挙がった)、その摺合せは容易ではないことが明らかとなった。また、国際規制による調和の観点から、いずれの国際機関も「科学」を重視するが、その位置づけには微妙な違いがあることが、過去の成長ホルモン牛事件におけるコーデックスの議論や2回にわたるWTO紛争の経緯の分析からわかった。この事件は、10年以上の紛争の末、欧州が米国・カナダ各々とMOUを結ぶことにより、国際レベルの議論とは別の形で解決したが、それは国際機関において「科学」の制度化が進む一方で、欧州が主張する「その他の要素」の制度化が曖昧なままであることも要因の一つであると考えられた。科学技術の発展に伴い、こうした「科学」と「その他の要素」が交錯する問題は今後もとどまり続けることが想定されることから、関連する国際機関間での「科学」と「その他の要素」の概念の役割・位置づけに関する議論と調和が改めて求められている、との重要な示唆を得た。
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