2011 Fiscal Year Research-status Report
内戦における反政府武装集団の行動―組織内政治の観点から―
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23730162
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大林 一広 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (30598149)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 南スーダン / ジュバ |
Research Abstract |
本研究の目的は、内戦中の反政府武装組織(以下、武装組織)の行動について組織内政治の観点から理論の構築とデータの収集、分析を行うことである。初年度となる平成23年度は、主に仮説の構築とデータ収集のための現地調査の下見、そして既存のアンケート調査の分析を進めた。以下、これら3点について順に述べる。1.理論の構築:武装組織内部の対立の原因について既存文献は、民族、イデオロギー、国家の操作、権力闘争などを指摘する。既存文献は、これらの要因を対抗仮説と捉える傾向にある。これに対して本研究では、これらの要因の間の相互作用とその組織内対立の激化や分裂への影響に注目して、理論化を進めた。2.南スーダンでの事前調査:平成23年9月に首都のジュバで事前調査を行った。現地機関や国際機関、外国政府機関と協議し、調査への協力を依頼した。また、反乱軍の組織内対立の戦後復興への影響という観点から、内戦中にスーダン人民解放軍(SPLA)内部で生じた対立が、南スーダン独立後の新生国軍への不信感に繋がっていることを確認した。この不信感は、独立した南スーダンと北のスーダン政府、南スーダンと国内勢力、そして国内勢力間―例えば部族間―の対立にも影響を与えているとの暫定的な結論を得た。この点については、調査結果を草稿に纏めており、平成24年度中に学術雑誌に投稿予定である。3.アンケート調査文献の分析:内戦経験国において、元反乱軍兵士や住民へのアンケートを行った既存研究のレビューやデータの分析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、内戦・組織論文献のレビューや仮説の構築、南スーダンでの事前調査を行った。また、アンケート調査文献の分析を開始した。唯一、オスロの内戦研究センター(CSCW)への2週間の訪問については、調査の効率を考え来年度に延期した。平成23年度中もCSCWとは定期的に連絡を取っており、また平成24年度中の訪問時期についても既に調整済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、アンケート調査文献の調査の完了後、理論的枠組みの改善や現地調査方法の改善のため、ノルウェーの内戦研究センターを訪問する。そのあと、スリランカ、南スーダンで現地調査を行い、データを収集する予定である。これらの成果を元に、論文2-3本の執筆を予定している。なお、当初ウガンダでの現地調査も予定していたが、他の調査地でのコストが予定を上回る見込みであることなどから、ここでの現地調査は断念することを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、研究費の一部が未使用となった。これは、当初予定していたオスロの内戦研究センター訪問を平成24年度に延期したためである。平成24年度はまず、アンケート調査文献の調査を完了する。同時に、南スーダンでの事前調査の結果をまとめて、学術雑誌に投稿する。次に、オスロの内戦研究センターを訪問し、研究へのフィードバックを受ける。その後、データ収集のため現地調査を行う。当初はウガンダで現地調査を行う予定であったが、上記の通り資金面での問題があるため、断念することを検討している。その場合は、当初平成25年度に予定していた南スーダンまたはスリランカでの現地調査を前倒しして行う予定である。
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