2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国における対外政策の全体的な調整・決定・執行メカニズム
Project/Area Number |
23730168
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
益尾 知佐子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (90465386)
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Keywords | 中国 / 海洋政策 / 漁業 / 東シナ海 / 南シナ海 / 黄海 / 国家海洋局 / 対外政策 |
Research Abstract |
本研究では、中国の対外政策をめぐるアクターの多元化、および政策の決定・執行過程の変化という問題を、中国と周辺国との関係性の変化を題材としながら検討した。まず、中国の経済力の伸張が中国の周辺国に大きな刺激を与え、特に中国と陸続きの周辺国との間でダイナミックな経済統合が進展していることが確認できた。しかし他方で、中国は海で接する周辺国との間で2010年頃から摩擦を深刻化させている。そのため、本研究も研究期間の後半は海洋問題に注力し、中でも各国で国民のナショナリズムが燃え上がりやすい漁業問題を中心に取り上げて検討した。最終年度では、当初検討を行っていた東シナ海の漁業問題から手を広げ、黄海をめぐる中国と朝鮮半島の関係を検討し、また東シナ海についても実際の漁業従事者にインタビューを行い、南シナ海についても分析を進めた。 中国共産党、中国の中央政府、地方政府、漁民、メディアなどの関係性を検討した結果、中国の対外的緊張が国内社会の変化によって、しばしば党や中央政府の想定を超えた形で発生していること、ただしいったん事件が報道されると指導者は事態の国内的収拾のためにより強硬な姿勢を示す傾向があることを確認した。また中国の対外的緊張の大きな原因が、中国共産党が相対的に対外関係を軽視し始めたことだけでなく、党のガバナンスの弱さにある(当局が国内の諸アクターの利害調整機能を果たせず、国内の不満が鬱積している)ことも明らかになった。 なお本研究期間中に、英語や中国語で学会報告や論文執筆の経験を積み、これまで専門としてきた中国外交の研究成果を中国の内政や経済とリンクさせることができた。これは研究者のキャリアアップの面で重要なステップとなった。
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Research Products
(6 results)