2013 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム和平と同盟の終焉-1970年代東南アジアにおける西側同盟の再編
Project/Area Number |
23730171
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
水本 義彦 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (60434065)
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Keywords | ベトナム戦争 / 同盟 / ニクソン / タイ / 軍事撤退 |
Research Abstract |
本年度は、ニクソン米政権のベトナム政策が西側同盟諸国に与えた政治・安全保障上の影響を考察するために、アメリカとタイの関係を事例研究として取り上げ、その成果を「ニクソン政権のベトナム政策とタイ、1969-1973」『コスモポリス』(2014年3月、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻)として刊行した。近年、ニクソン政権期のベトナム政策に関する本格的な実証研究が徐々に発表されているが、いまだ先行研究において考察されていない重要なテーマが、米軍の軍事拠点としてベトナム戦争の遂行に深く関与していたタイと同米政権の同盟関係の分析である。本研究は、米政府の刊行史料に加えて、本研究助成による過去3年間の史料調査(アメリカ国立公文書館およびニクソン大統領図書館)で得た米国政府文書を用いて、これまで十分に明らかにされてこなかった、ベトナム戦争をめぐるアメリカとタイの軍事的協力と政治的摩擦の両面を実証した。本研究では、米・タイ両国の政治的不和を引き起こした要因として、「ニクソン・ドクトリン」や「ベトナム化政策」に象徴されるニクソン政権の軍事撤退計画のみならず、米国議会、特に上院外交委員会での米・タイ軍事同盟の実態追求と両国の同盟に対する批判に注目し、米国内での行政府と議会の対立が、タイとの同盟関係に及ぼした影響を明らかにした。さらに、本研究では、①これまで指摘されていた以上に、タイ政府がニクソン政権のラオス、カンボジア軍事侵攻に関与していたこと、また、②その結果として、タイによる隣国ラオス、カンボジアへの関与は、インドシナ諸国の兵力を他のインドシナ諸国に投入することで、米軍のベトナム撤退を促進する、ベトナム戦争の「インドシナ化」であったとの新しい解釈を提示した。
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