2011 Fiscal Year Research-status Report
国際平和活動の要員提供メカニズムの実証研究-政治体制と国際協力の関連について
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23730181
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
久保田 徳仁 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 人文社会科学群, 准教授 (00545858)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際平和活動 / PKO / 南アフリカ共和国 / ナイジェリア / 国際政治 / 国際協力 |
Research Abstract |
本研究の目的は、各国が国際平和活動の軍事要員を提供する動機を探ることにある。特に本研究では政治体制と要員提供のタイプに注目し、各国の政治体制の違いによって要員提供の動機、仕組みがどのように異なるのか、そして、民主化や軍事クーデタといった政治体制の変動が国際協力活動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。 本研究では(1)新しい指標に基づいたテータセットを作成し、軍事政権と他の権威主義諸国との要員提供の差を比較する、(2)現地調査に基づいた事例研究を実施し、計量研究では扱えない国内政治プロセスを明らかにする、(3)(2)を反映した計量モデルの改良、の3点を研究目的としている。このうち(1)はPCの納期の遅れを勘案し実行を平成24年度に繰り越すことにし、(2)の現地調査を優先することにした。 平成23年度はおもにアフリカ諸国の民主化過程と要員提供の関係について重点的に研究を行った。ナイジェリアのように軍政の期間が長かった国と、南アフリカ共和国のように少数派による権威主義体制の期間が長かった国とでは、民主化時の要員提供のメカニズムが異なるという仮説をもとに調査を行った。 ナイジェリアに関しては、二次文献による調査が完了していたが、事前調整がうまくいかず、現地情勢も悪化したため現地への渡航を次年度に持ち越した。これに代替する形で、南アフリカ共和国への現地調査を行った。軍学校における政軍関係のセミナー参加、およびシンクタンクでの聞き取り調査、南アフリカ共和国のPKO訓練センターでの聞き取り調査などを行い、十分な資料を収集することができた。 研究成果については、2011年度日本国際政治学会の年次大会で、ナイジェリアのPKO要員派遣に関する発表を行い、おおむね好評価を得ている。現在は、南アフリカ共和国のPKO要員提供と政軍関係について資料整理を行い、平成24年度に継続して現地調査を行う計画を立案している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画において、平成23年度にはアフリカの現地調査に加えて、大規模な計量分析を可能にするデータセットの作成が予定されていたが、PCの納入の遅れと、作業効率の悪さから予定された進度での作業ができず達成できなかった。基本的なデータセット作成のプロシージャーはすでにできているため、今後は作業を進めていく予定である。 また平成23年度は、二次文献に依拠したナイジェリアの調査は行ったものの、現地情勢の不安定化と、調整不十分によりナイジェリアの現地調査が行えなかった。また、申請段階ではニューヨーク国連本部でのインタビューも想定していたが、予算不十分により、この実施をあきらめた。本研究が加盟国の国内政治体制と対外政策決定の側面を重視している以上、ニューヨークでの調整局面以上に、加盟国内の国内政治過程に注目することは妥当であり、予算制約下で本国での調査をニューヨークでの調査に優先することとなった。今後も旅費の高騰が想定されることから、平成24年度においてもニューヨークの調査は行わない予定である。 他方、南アフリカ共和国での現地調査は現地大使館や多くの研究者等の協力を得て十分な調査を行うことができた。また、平成23年11月に日本国際政治学会の年次大会においてナイジェリア(およびフィジー)の要員提供に関する暫定的な発表を行うことができ、フィードバックも得られ、研究の微調整を行うこととなった。具体的には、アフリカのルワンダ、そして南アジア諸国の要員提供のプロセスを明らかにすることが重要であるとの認識に至った。研究の修正も含め、この点では想定以上に早く作業が進んだといえる。平成24年度に予定している現地調査の結果を合わせて論文として取りまとめる予定である。 以上の点から、平成23年度の研究目的の達成度は、やや遅れていると判断されるが、平成24年度において相当程度はカバーできるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施できなかったもののうち、(1)計量分析のためのデータセットの作成、(2)ナイジェリア、ルワンダにおける現地調査、の2点を最優先実施事項と考えている。 (1)について具体的には、当初の計画通り、country-mission-yearのデータ枠組みに、従属変数、独立変数の双方を組み合わせて作成する予定である。ただし、現在南アフリカ共和国の事例の整理段階で当初の仮説から逸脱するパターンが見えてきた点について、モデルの若干の修正を考えている。また、ルワンダに関しても、パイロット調査によって軍の組織的利益を重視した分析では現在のルワンダ軍の活発な貢献を十分説明できないことが明らかとなっている。これらについては、物質的な利益構造に加えて、国内の規範や知識体系を考慮する必要があると理解している。一般化できそうなものについては指標化し、モデルの中に取り込んでいく予定である。 (2)の現地調査について具体的には、夏季期間にナイジェリア、ルワンダへ渡航し、資料収集、シンクタンクや軍機関における聞き取り調査を実施する。現在現地との調整中である。南アフリカ共和国の調査においても、一回の渡航では十分な資料がそろわなかったことから、追って調査を重ねる予定ではあるが、今年度の研究ではナイジェリアと、ルワンダの資料収集を優先し、研究の全体像を明確化する予定である。 研究成果の取りまとめに関しては、南アフリカ共和国の事例を簡単に取りまとめたのち、現地調査の成果を踏まえて、アフリカ諸国の要員提供の類型化を目標とした論文を作成する予定である。計量研究については、パイロット的な分析を年度中に終え、モデルの修正などは次年度以降に継続することになると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品の購入に関しては、関連する学術雑誌(International Peacekeeping)の購入(約6万円)のみで助成金申請時から変動はない予定である。 旅費に関しては海外での研究発表を考えていたが、平成24年度は現地調査を最優先し、アフリカの二か国の調査に割り当てる。予算的に余裕が生じた場合は、南アフリカ共和国で再度資料収集やインタビューを実施する予定である(合計約45万円を想定)。平成23年度の実績から、ほぼすべての研究費が現地調査(準備も含める)に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)