2013 Fiscal Year Research-status Report
プロダクトライフサイクルおよび新旧製品への選好に注目した経済成長理論と厚生分析
Project/Area Number |
23730182
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀井 亮 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90324855)
|
Keywords | 経済成長 / 研究開発 / プロダクトライフサイクル |
Research Abstract |
本年度は4年間のプロジェクトの3年目に当たるが、それまでの研究を受け、査読つき国際学術雑誌に2本の関連する論文が掲載された。Macroeconomic Dynamicsに掲載された論文" Financial infrastructure, technological shift, and inequality in economic development”においては、金融インフラストラクチャーが整備されるに伴い、新技術採用に必要な大きな資金調達が可能になり、技術転換が発生するプロセスを分析した。本研究プロジェクトは、新しいプロダクトの出現、およびそれによる旧プロダクトの衰退に注目しているが、上記論文の結果は金融インフラストラクチャーが、新技術採用を通じてプロダクト入れ替わりを促進することを示唆する結果であることから、本プロジェクトにとって重要な結果であったといえる。 また、Oxford Economic Papersに掲載された論文“Timing of Childbirth, Capital Accumulation, and Economic Welfare”においては、近年日本を含む先進国において顕著な晩婚化、およびそれによる少子化が、経済成長プロセスにどのような影響を与えるか、特に資本蓄積と厚生に注目して研究したものである。世代重複モデルを用いた分析において、晩婚化がその後長期において世代構成を変化させ、循環的な変動を生むことが示された。世代構成の変化は消費者の財需要パターン、特にどのようなプロダクトを好むかにも影響を与えると考えられることから、プロダクトサイクルの変遷にも影響を与えると考えられる。 さらに、経済成長と環境の関連を包括的に論じた論文”Environment and Growth”および、その邦訳版である「環境と経済成長」を執筆し、それぞれディスカッションペーパーとした。これらは、次年度以降それぞれHandbookおよび学術雑誌において出版される見込みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読つき国際雑誌への2本の論文出版を含め、順調に研究成果が出ているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、研究論文の完成および、その成果発信に力を入れたいと考えている。とくに、本研究課題における経済成長の仮説はその新規性故に従来理論と乖離が大きく、学術界において受け入れられるためには、海外(特にアメリカ・欧州)における理解を得ることが非常に重要である。そのために、積極的に海外をを訪れ、研究発表や、当該分野における有力研究者とのディスカッションを行いたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、本プロジェクト科研費を用いて、海外での研究報告および研究交流を予定していたが、別途文部科学省の研究大学強化促進事業による学内公募に採択されたため、上記資金を用いて欧州における滞在研究・成果の中間報告を行うことができた。そのため、次年度には当初予定以上の繰り越しをすることが可能になった。 次年度の研究推進方策の項で述べたとおり、本プロジェクトの成果を大きなものにし、さらなる飛躍を目指すためには、海外、特にアメリカ・欧州における本研究に対する認知と理解を醸成することが重要である。本年度は別途資金により欧州における中間成果報告・ディスカッション・滞在研究ができたので、最終年度である次年度は上記繰り越し金額を有効に用いて主にアメリカにおける成果発信・ディスカッション・滞在研究を行いたい。
|